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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第89話 神代の処刑人

神殿奥。

暗闇の中。


巨大な“何か”が立っていた。


重い足音。

轟音。

空気が震える。



ゆっくり姿が見えてくる。


黒い甲冑。

異常な巨体。

全長四メートル級。


そして。

右腕だけが、人間のものじゃなかった。


巨大な黒刃。


腕そのものが武器へ変質している。


リゼが息を呑む。


「……なに、アレ」


エレノアの赤い瞳が細くなる。


「神代処刑騎士」


グランが顔をしかめる。


「また厄介そうなの出てきたな……」



セレナだけは笑っていた。


「なるほど」


紫の瞳。

興味深そうに細くなる。


「まだ残っていたのね」



神代処刑騎士。


神代文明時代。


裏切り者。

反逆者。

魔王軍離反者。


それらを粛清するためだけに作られた、人型処刑兵器。


感情はない。

慈悲もない。


ただ。

命令だけを遂行する。



処刑騎士の赤黒い瞳が光る。


そして。

士郎を見た。


静寂。


次の瞬間。


空気が沈んだ。


殺気。


圧倒的。


リゼが震える。


「……息、苦しい」


グランも冷や汗を流していた。


「今までで一番ヤバいぞコイツ」



それでも。

士郎は笑っていた。


黒い瞳。

歓喜。


「いい」


その瞬間。


処刑騎士が消える。


轟音。


超高速。


巨大黒刃が士郎へ振り下ろされた。



士郎は見切る。


回避。


だが、遅い。


完全には避けきれない。


黒刃が脇腹を裂く。


血飛沫。


リゼが叫ぶ。


「士郎!!」



それでも。

士郎は止まらない。


むしろ。

踏み込んでいた。


被弾を利用して距離を潰す。


完全実戦思考。


拳。


ドゴォォォォン!!!


処刑騎士の顔面へ直撃。


轟音。


巨体が揺れる。



処刑騎士は止まらない。


即座に反撃。


膝。

黒刃。

連撃。


しかも。

速い。


今までの神代騎士とは比較にならない。


完全に“殺し”へ特化している。



士郎の黒い瞳が細くなる。


技術がある。


しかも。

自分と似ている。


無駄がない。


全部が殺すためだけの動き。



処刑騎士が口を開く。


『……確認』


黒刃が振るわれる。


士郎は肘で逸らす。


轟音。


腕が痺れる。


それでも。

笑っていた。



『適合率上昇』


処刑騎士の赤黒い瞳が揺れる。


『危険指定更新』


静寂。


次の瞬間。


処刑騎士の背部が展開した。


無数の黒刃。


リゼが顔を青ざめさせる。


「いや絶対増えると思った!!」



黒刃射出。


超高速。


空間を埋め尽くす。


それでも。

士郎には見えていた。


軌道。

死角。

全部。


魔王因子によって強化された感覚が、神代兵器の殺意すら解析している。



士郎が駆ける。


最短。


黒刃の隙間を抜ける。


紙一重。


普通なら即死。


それでも。

士郎は笑っていた。


殺されるかもしれない。


その感覚が。


たまらなく心地良かった。



次の瞬間。


士郎が処刑騎士の懐へ潜り込む。


拳。

肘。

膝。


超高速連撃。


轟音。


神代装甲へ亀裂が走る。



その時。


処刑騎士が初めて言った。


『……酷似』


士郎の黒い瞳が細くなる。


「誰にだ」


静寂。


処刑騎士の赤黒い瞳が揺れた。


『原初の魔王』


次の瞬間。


処刑騎士の黒刃へ、異常な魔力が集まり始めた。

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