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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第9話 黒狼と呼ばれる男

赤蛇壊滅から三日。


城壁都市ルーガスは、異様な熱気に包まれていた。


酒場。

市場。

冒険者ギルド。


どこへ行っても同じ話題。


“黒狼”。


黒いコートを纏い、素手で盗賊団を壊滅させた怪物。


その噂が、街中へ広がっていた。


「聞いたか?」


「赤蛇を一人で潰したらしいぞ」


「団長のバルガスまで素手で……」


「ありえねぇ」


「でも生き残りが全員同じこと言ってる」


恐怖と興奮が混ざった声。


人々はまだ理解できていなかった。


あれが本当に人間なのか。



冒険者ギルド。


士郎はいつものように肉を食っていた。


山盛り。


尋常じゃない量。


リゼが呆れた顔をする。


「ほんと、食費やばいよね……」


士郎は淡々と肉を咀嚼する。


「腹が減る」


それだけだった。


最近特に酷い。


いくら食っても満たされない。

身体が常に何かを求めている。

理由は分からない。

だが気にしても仕方ない。


その時。

ギルド内がざわついた。


「おい……」


「来たぞ」


視線が入口へ集まる。


重装備の男たち。


王国騎士団だった。


空気が張り詰める。


リゼが不安そうに呟く。


「なんで騎士団が……」


先頭の騎士が士郎を見る。


鋭い眼。

だが、その奥には警戒があった。


「西園寺士郎だな」


「ああ」


騎士は一枚の紙を取り出す。


「ギルドマスター・ダグラスへ。王都より通達だ」


ダグラスが受け取り、眉をひそめた。


「……討伐依頼?」


ギルドがざわつく。


騎士は低く言う。


「北部街道付近で魔獣被害が拡大している」


「どの程度だ」


「村が二つ消えた」


沈黙。


空気が重くなる。


レオンの目が細くなる。


「……種類は」


騎士が答える。


「不明」


それが一番まずかった。


未知の魔獣。

しかも村を壊滅。

普通の依頼ではない。


ダグラスが険しい顔で聞く。


「A級案件か?」


「その可能性が高い」


ギルド内の冒険者たちがざわめく。


A級。


それは、一流冒険者でも命懸けの領域。


レオンが腕を組む。


「面倒だな」


だが。

士郎だけは静かだった。


むしろ。

少しだけ目が細くなる。


「強いのか」


騎士が士郎を見る。


黒狼。


その噂は王都にも届いている。


そして騎士団も理解していた。

目の前の男は危険だと。


「……分からん」


「そうか」


士郎は立ち上がる。


黒いコートを羽織る。


リゼが嫌な予感を覚えた。


「え、まさか」


士郎は当然のように言った。


「行くぞ」


ダグラスが眉をひそめる。


「待て。まだ情報が足りん」


「現地で見ればいい」


「お前な……」


レオンが苦笑する。


「相変わらずだな」


だが、その目は少し真剣だった。


A級案件。

普通なら慎重に動く。

なのに士郎は、まるで散歩へ行くみたいな顔をしている。

その異常さが怖い。



翌日。


北部街道。


士郎たちは壊滅した村へ到着していた。


静かだった。


風しか聞こえない。

家屋は破壊され、地面には巨大な爪痕。

血の匂いもまだ残っている。


リゼの顔が青ざめる。


「ひどい……」


レオンが周囲を見る。


「……妙だな」


「何がだ」


「死体が少ない」


士郎は地面を見る。


巨大な足跡。


深い。


重い。


そして。


「デカいな」


その時だった。


森の奥から、低い唸り声が響く。

空気が変わる。


レオンが剣へ手を置く。


「来るぞ」


木々が揺れる。

地面が震える。


そして現れた。


巨大な獣。


全長五メートル超。

黒い毛皮。

異常な筋肉。

赤い瞳。


その姿を見た瞬間、レオンの顔色が変わった。


「……ブラッドベア」


A級危険種。


普通の冒険者では相手にならない怪物。


リゼが震える。


「なんでこんなのが……!」


ブラッドベアが咆哮した。


轟音。

空気が震える。


だが。


士郎は笑っていた。


ほんの少し。


獰猛に。


「いい」


拳を握る。


「やっとマシなのが来た」


レオンが息を吐く。


「……やっぱりお前、頭おかしいわ」

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