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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第87話 魔王の記憶

奈落城地下深部。


崩壊都市。


空気が重い。


黒い塔。


赤黒い鼓動。


ドクン。


ドクン。


まるで。


都市そのものが生きているみたいだった。



リゼが顔をしかめる。


「嫌な予感しかしない……」


グランも周囲を警戒する。


剣を握る手に力が入っていた。


「ここ、本当に遺跡かよ」


静かすぎる。


死んだ街。


なのに。


何かが見ている感覚だけが消えない。



セレナは前を見据えていた。


紫の瞳。


黒い塔。


「あそこが中心」


静かな声。


「“魔王の心臓”が眠る場所よ」


エレノアの赤い瞳が細くなる。


警戒。


焦り。


そして。


僅かな恐怖。


「……進行が早すぎる」


視線は士郎へ向いていた。


黒い靄。


以前より濃い。


瞳の奥に赤が混ざる時間も増えている。



士郎は歩いていた。


静かに。


黒い瞳。


だが。


時折、視界が揺れる。


知らない景色。


燃える空。


崩壊都市。


膝をつく騎士たち。


巨大な黒い玉座。


そして。


赤黒い瞳。



『壊せ』


声。


低い。


頭の中へ直接響く。


『世界は脆い』


士郎の足が止まる。


リゼが振り返る。


「士郎?」


返事がない。



視界が歪む。


戦争。


血。


死。


神代騎士団。


膝をつく軍勢。


巨大な黒い王。


その背後。


無数の翼。


そして。


燃え落ちる都市。



『恐れるな』


声。


重い。


冷たい。


『恐怖は弱さだ』


士郎の黒い瞳へ、赤が混ざる。


黒い靄。


漏れ出す。


空気が軋んだ。



グランが顔をしかめる。


「またかよ……!」


リゼも不安そうだった。


「大丈夫なの……?」


エレノアの声は低い。


「大丈夫じゃない」


静寂。


珍しく断言だった。


「普通なら壊れてる」


精神が。


人格が。


魔王因子に呑まれて。


とっくに終わっている。


なのに。


士郎は壊れない。


むしろ。


馴染んでいる。



士郎がゆっくり顔を上げた。


黒い塔。


赤黒い鼓動。


まるで。


呼んでいる。


その時。


士郎の口元が少し歪む。


「……思い出してきた」


空気が凍った。


リゼが固まる。


「は?」


セレナの紫の瞳が細くなる。


エレノアの顔色も変わった。


「何を……?」


士郎は少し考える。


そして。


静かに言った。


「戦い方だ」


沈黙。



次の瞬間。


崩壊都市の影が動いた。


轟音。


巨大な瓦礫が吹き飛ぶ。


そして。


現れた。


漆黒の巨兵。


十メートル級。


四本腕。


巨大剣。


全身へ刻まれた神代文字。


胸部核だけが赤黒く脈打っている。


リゼが絶叫した。


「デカすぎるってぇぇぇ!!」


セレナが低く呟く。


「神代守護兵……」


エレノアの表情が険しくなる。


「城塞攻略級……!」


その瞬間。


巨兵の赤黒い瞳が士郎を捉えた。


そして。


低い声が響く。


『……魔王候補』


静寂。


士郎だけが笑っていた。


「強いか?」

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