第82話 神代騎士
奈落城外縁。
濃霧の中。
巨大な神代騎士が立っていた。
五メートル級の巨体。
漆黒の全身甲冑。
頭部から伸びる巨大な角。
そして。
胸部で脈動する赤黒い核。
普通の神代兵とは存在感が違う。
まるで。
戦争そのもの。
◇
神代騎士が剣を構える。
轟音。
空気が震える。
リゼが顔を青ざめさせた。
「絶対ヤバいってアレ……」
グランも険しい顔になる。
「今までの雑兵とは別格だな」
エレノアの赤い瞳が細くなる。
「神代騎士級……」
セレナは静かに笑った。
「奈落城の門番よ」
◇
だが。
士郎だけは笑っていた。
「いい」
次の瞬間。
神代騎士が消える。
巨体とは思えない速度。
轟音。
超重量斬撃。
士郎は見切る。
最小動作。
回避。
剣が地面を叩き割った。
大地崩壊。
衝撃波で霧が吹き飛ぶ。
◇
士郎が踏み込む。
拳。
ドゴォォォォン!!!
神代騎士の腹部へ直撃。
しかし。
止まらない。
普通の神代兵より遥かに硬い。
士郎の黒い瞳が細くなる。
「硬いな」
◇
神代騎士の剣が振るわれる。
横薙ぎ。
超広範囲。
士郎は跳ぶ。
回避。
衝撃波だけで周囲の岩場が砕け散った。
リゼが叫ぶ。
「威力おかしいでしょ!?」
グランも冷や汗を流す。
「まともに食らったら終わるぞ……」
◇
その時。
士郎は笑っていた。
楽しい。
強い。
しかも。
人間じゃない。
だから遠慮がいらない。
◇
士郎が再び突撃する。
拳。
肘。
蹴り。
人体破壊術。
全部急所狙い。
神代騎士は痛覚すらない。
止まらない。
巨大な剣が士郎を追い込む。
◇
次の瞬間。
剣が士郎の肩を掠める。
血飛沫。
それでも。
士郎は避けながら踏み込んでいた。
被弾覚悟。
完全な実戦思考。
距離を潰すための最適解。
そのまま。
肘打ち。
神代騎士の関節部へ直撃。
轟音。
初めて巨体が揺れた。
◇
エレノアが目を細める。
「見つけたわね」
神代騎士。
装甲そのものは異常硬度。
だが。
可動部は違う。
そこだけは構造上、僅かに脆い。
士郎はもう理解していた。
◇
神代騎士が咆哮する。
赤黒い光が全身へ走る。
次の瞬間。
無数の光弾が放たれた。
轟音。
爆発。
周囲一帯が吹き飛ぶ。
リゼたちも巻き込まれそうになる。
グランが叫ぶ。
「伏せろ!!」
◇
爆煙。
その中。
黒い影が走る。
士郎。
全部見えていた。
光弾の軌道。
爆発範囲。
最短距離。
魔王因子によって強化された感覚が、神代兵器の攻撃すら解析している。
◇
士郎が神代騎士の懐へ潜り込む。
そして。
拳を構えた。
狙うのは一つ。
胸部核。
◇
神代騎士も剣を振り下ろす。
超重量。
直撃すれば即死。
士郎は笑っていた。
殺されるかもしれない。
その感覚が。
たまらなく心地良かった。
◇
次の瞬間。
拳と剣が交差する。
轟音。
大地爆砕。
そして。
静寂。
神代騎士の胸部へ。
士郎の拳が突き刺さっていた。
赤黒い核に、亀裂が走る。
神代騎士の赤い瞳が揺れた。
まるで。
初めて“痛み”を知ったみたいに。




