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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第81話 奈落への道

翌朝。


地下闘技都市グラディウス外縁。


重い霧が広がっていた。


空が暗い。


昼なのに。


まるで陽光そのものが弱い。


グランが顔をしかめる。


「嫌な空気だな……」


セレナは前を歩きながら答える。


「奈落城周辺は昔からこうよ」


リゼが不安そうに周囲を見る。


「……呪われてるみたい」


エレノアは静かだった。


赤い瞳だけが、ずっと士郎を見ている。



士郎はいつも通り歩いていた。


黒いコート。


黒い瞳。


ただ。


時折、その奥に赤が混ざる。


本人は気づいていない。


しかし。


エレノアは気づいていた。


進行が早い。


魔王因子の侵食が。



その時。


士郎が足を止めた。


「どうした?」


グランが聞く。


士郎は霧の奥を見る。


「いるな」


静寂。


次の瞬間。


霧の中から“それ”が現れた。


人型。


鎧。


しかし。


首がない。


黒い甲冑だけが、独りでに歩いている。


しかも一体じゃない。


十。


二十。


もっと。


リゼが顔を青ざめさせる。


「なにアレ……」


セレナが静かに答えた。


「神代兵」



神代文明時代の自律兵器。


死んでも動き続ける兵士。


奈落城周辺を永遠に巡回している。


神代兵たちが一斉に武器を構える。


剣。


槍。


斧。


そして。


全員の鎧へ、神代文字が刻まれていた。



次の瞬間。


神代兵たちが突撃する。


轟音。


地面が揺れる。


士郎は笑っていた。


「いい」


踏み込み。


拳。


ドゴォォォォン!!!


先頭の神代兵が砕け散る。


金属片が飛び散る。


それでも。


残りは止まらない。


無感情。


無機質。


まるで死そのもの。



グランも剣を抜く。


「チッ!!」


斬撃。


神代兵の腕を切断。


しかし。


止まらない。


切断されたまま突進してくる。


リゼが悲鳴を上げる。


「怖っ!?」


エレノアが炎を放つ。


紅蓮。


爆炎。


複数体を焼き払う。


それでも。


焼けながら動き続けている。


普通じゃない。



セレナが冷静に言う。


「核を壊して」


「また核かよ!」


グランが叫ぶ。


その時。


士郎はもう動いていた。


黒い瞳。


神代兵たちを見る。


そして。


見つける。


胸部。


赤黒い光。


核。



士郎が踏み込む。


速い。


神代兵たちの槍が突き出される。


それでも。


全部見えていた。


回避。


受け流し。


最短距離。


完全な実戦技術。


拳。


肘。


蹴り。


核だけを正確に破壊していく。


轟音。


神代兵たちが次々停止した。



グランが顔を引きつらせる。


「攻略速度おかしいだろ……」


セレナは静かに笑う。


「適合してるもの」


リゼが嫌そうな顔をする。


「その言い方ほんと怖い」



その時。


霧の奥から、巨大な影が現れた。


全員の動きが止まる。


巨大。


五メートル以上。


漆黒の全身甲冑。


そして。


頭部には巨大な角。


エレノアの赤い瞳が細くなる。


「……上位個体」


巨大な神代騎士。


その胸部だけ、異様な赤黒い光を放っていた。


普通の神代兵とは格が違う。



神代騎士が剣を抜く。


轟音。


大気が震える。


そして。


空洞の兜の奥。


赤い光が灯った。


その瞬間。


士郎は笑っていた。


黒い瞳。


歓喜。


「強いな」


神代騎士が、ゆっくり士郎へ剣を向ける。


まるで。


挑戦を受けるみたいに。

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