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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第79話 共鳴

地下酒場。


崩れた神代兵器の残骸。


その中心から、黒い光が漏れていた。


脈動。


ドクン。


ドクン。


まるで心臓。


生きているみたいだった。



士郎の周囲の黒い靄が揺れる。


反応していた。


呼応するみたいに。


エレノアの表情が変わる。


赤い瞳が細くなる。


「離れて!!」


しかし。


遅かった。


黒い光が、一瞬で士郎へ流れ込む。


轟音。


空気が震えた。



リゼが悲鳴を上げる。


「士郎!!」


黒い靄が膨れ上がる。


酒場全体へ圧力が広がった。


客たちが次々倒れる。


呼吸ができない。


ただ立っているだけで、本能が恐怖する。


そんな“何か”。



士郎の視界が歪む。


知らない景色。


黒い空。


崩壊した都市。


山のような死体。


燃える世界。


そして。


玉座。


巨大な黒い影が座っている。


顔は見えない。


だが。


赤黒い瞳だけが見えた。



『器』


声。


頭の中へ直接響く。


低い。


重い。


人間の声じゃない。


『ようやく見つけた』


士郎の黒い瞳が細くなる。


「……誰だ」


その瞬間。


景色が崩壊した。



士郎が膝をつく。


酒場の床が砕ける。


黒い靄。


さらに濃い。


リゼが駆け寄ろうとする。


しかし。


エレノアが止めた。


「近づかないで」


珍しく強い声だった。


リゼが顔を青ざめる。


「え……?」


エレノアは士郎を見ていた。


赤い瞳。


そこにあったのは、恐怖ではない。


焦り。



おかしい。


ここまで早いはずがない。


魔王因子が、士郎へ馴染みすぎている。


まるで。


最初から“器”として完成していたみたいに。



セレナは静かに笑っていた。


「やっぱり」


グランが怒鳴る。


「おい! 何が起きてる!?」


セレナは士郎から目を離さない。


「適合が始まったのよ」


「適合……?」


「魔王因子との」


静寂。


酒場の空気が凍る。



士郎の身体から黒い靄が漏れ続ける。


床。


壁。


空間。


全部が軋む。


普通じゃない。


存在そのものが変質し始めていた。



その時。


士郎がゆっくり顔を上げる。


黒い瞳。


その奥が、赤く染まりかけていた。


リゼが息を呑む。


「……士郎?」


士郎は答えない。


その視線が、崩れた神代兵器を見る。


まるで。


“餌”を見るみたいに。



次の瞬間。


士郎が残骸へ近づく。


そして。


黒い核を掴んだ。


エレノアが叫ぶ。


「触るな!!」


遅い。


黒い核が崩れる。


そして。


闇みたいな粒子が、士郎へ吸い込まれていく。


轟音。


酒場全体が揺れた。



士郎の脳裏へ、大量の映像が流れ込む。


戦争。


虐殺。


滅びた文明。


黒い王。


そして。


世界を覆う“闇”。


人間の記憶じゃない。


もっと古い。


もっと異常な何か。



その時。


士郎が笑った。


獰猛に。


「……いい」


エレノアの顔色が変わる。


最悪だった。


士郎は拒絶していない。


受け入れている。


しかも。


あまりにも自然に。



セレナは静かに呟く。


「本当に壊れてるわね」


しかし。


その紫の瞳は、嬉しそうだった。



その瞬間。


士郎の背後。


巨大な黒い影が、一瞬だけ現れる。


王冠。


翼。


赤黒い瞳。


酒場の客たちが震える。


誰も理解できない。


それでも。


本能だけは理解していた。


——アレは、人間じゃない。

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