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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第75話 拳王

中央闘技場。


崩壊寸前。


壁は砕け。


地面は陥没し。


観客席すら半壊していた。


それでも。


誰も逃げない。


目を離せなかった。


地下都市最強。


拳王ゴルド。


そして。


黒狼、西園寺士郎。


二人の戦いは、もはや伝説になっていた。



ゴルドが笑う。


血まみれで。


全身傷だらけ。


それでも。


心の底から楽しそうだった。


「最高だァァァ!!」


踏み込み。


轟音。


拳。


超重量。


士郎の顔面へ直撃する。


普通なら頭が吹き飛ぶ。


それでも。


士郎は耐えた。


口から血を吐きながら。


笑っていた。



士郎の拳が返る。


喉。


肋骨。


心臓。


全部急所。


完全な殺しの技術。


それでも。


ゴルドも止まらない。


肘。


膝。


頭突き。


互いに回避しない。


いや。


回避できる。


その上で。


踏み込んでいる。


殺し合いのために。



観客たちは震えていた。


「なんで立ってるんだ……」


「もう人間じゃねぇ……」


「化け物だ……」


誰も理解できない。


どうして戦い続けられるのか。



その時。


ゴルドの拳が士郎の脇腹へめり込む。


骨が砕ける音。


それでも。


士郎は止まらない。


その瞬間を利用して踏み込む。


完全な実戦思考。


喉への拳。


ゴルドの首が揺れる。


血飛沫。


それでも。


ゴルドは笑っていた。


「いい!!」



黒い靄が溢れる。


士郎の周囲。


まるで生きているみたいに。


観客席がざわめく。


「またアレが……!」


「なんなんだ黒狼……!」


エレノアは静かだった。


赤い瞳で士郎を見る。


魔王因子。


限界を超え始めている。



その時。


ゴルドが笑いながら言う。


「お前、この街をどうする?」


士郎は拳を構える。


「別に興味ない」


「ハハッ!!」


ゴルドは嬉しそうだった。


「最高だなァ!!」


地下都市。


権力。


金。


支配。


そんなものに興味はない。


ただ。


強敵と戦うためだけに立っている。


――それが西園寺士郎だった。



次の瞬間。


両者が同時に踏み込む。


轟音。


地面爆砕。


拳。


真正面衝突。


衝撃波で中央闘技場そのものが崩壊を始める。


観客たちが悲鳴を上げた。



それでも。


二人は止まらない。


ゴルドの拳。


士郎の拳。


互いに血まみれ。


それでも笑っていた。


完全に壊れている。



その時。


士郎の黒い瞳が細くなる。


全部見えた。


ゴルドの呼吸。


重心。


筋肉。


次の動き。


魔王因子によって強化された超感覚。


その瞬間。


士郎が踏み込む。


最短。


最速。


拳。


ドゴォォォォォォォン!!!


ゴルドの胸へ直撃。


轟音。


巨体が吹き飛ぶ。


闘技場中央を砕きながら転がる。


静寂。



誰も動けなかった。


拳王ゴルド。


地下都市絶対王者。


その男が。


初めて倒れた。



ゴルドは仰向けのまま笑う。


血を吐きながら。


「……負けた」


静寂。


そして。


観客席が爆発した。


「うおおおおおおお!!!」


「黒狼ォォォォ!!」


「新しい王だァァァァ!!」


熱狂。


恐怖。


歓喜。


全部混ざっていた。



ゴルドはゆっくり立ち上がる。


そして。


士郎を見る。


獰猛に笑った。


「持ってけ」


観客席が静まる。


ゴルドは叫んだ。


「今日からテメェが拳王だ!!」


歓声爆発。


地下都市全域が揺れる。


黒狼。


西園寺士郎。


その名が。


地下世界最強として刻まれた瞬間だった。



しかし。


士郎は興味なさそうだった。


「いらん」


静寂。


そして。


ゴルドが爆笑する。


「ハハハハハッ!!」


観客たちも呆然としていた。


地下都市の頂点。


それを。


この男は本気でどうでもよさそうにしている。



エレノアが妖艶に笑う。


「ほんと、王に向いてるわね」


士郎は眉をひそめた。


「気持ち悪いこと言うな」


リゼが吹き出す。


グランも乾いた笑いを漏らした。


そして。


崩壊した中央闘技場の中心で。


新たな拳王は、面倒そうに立っていた。


第四章


『地下闘技都市編』 完。

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