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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第74話 黒狼と拳王

中央闘技場。


熱狂。


歓声。


悲鳴。


全部が混ざっていた。


地下都市最強。


拳王ゴルド。


そして。


黒狼、西園寺士郎。


二人の激突は、もはや試合ではない。


――災害だった。



ゴルドが笑う。


「最高だ黒狼!!」


次の瞬間。


踏み込み。


轟音。


巨大な拳が士郎へ叩き込まれる。


空気が裂ける。


それでも。


士郎は見切る。


最小動作。


回避。


同時に。


喉への拳。


ゴルドは首をずらして回避。


膝蹴り。


士郎は肘で逸らす。


衝撃波。


地面爆砕。


観客席最前列が吹き飛んだ。



「なんだよこの戦い!!」


「闘技場が壊れる!!」


実況すら逃げ始めていた。


普通の人間では近づくだけで死ぬ。


そんな領域。



それでも。


士郎は笑っていた。


最高だった。


ゴルドの拳。


重い。


速い。


技術もある。


しかも。


今までの相手みたいに脆くない。


――だから楽しい。



ゴルドも笑う。


「避けるだけじゃねぇな!!」


士郎は答えない。


次の瞬間。


踏み込み。


超近距離。


肘打ち。


拳。


関節破壊。


人体破壊術。


全部が急所。


殺し屋として完成された技術。


それでも。


ゴルドは耐える。


筋肉だけじゃない。


骨。


呼吸。


重心。


全てを極めている。


まるで“武”そのものだった。



ゴルドの拳が士郎の肩を掠める。


骨が軋む。


それでも。


士郎は止まらない。


むしろ。


その瞬間を利用して踏み込む。


完全な実戦思考。


喉への貫手。


ゴルドが辛うじて防ぐ。


「ハハッ!!」


ゴルドは嬉しそうだった。


「そう来ねぇとなァ!!」



観客席では、誰も息をしていなかった。


グランが乾いた声を漏らす。


「……イカれてやがる」


リゼも顔が青い。


「なんで笑ってるのあの二人……」


エレノアだけは静かだった。


赤い瞳で士郎を見る。


黒い靄。


さらに濃い。


そして。


士郎自身が、それを抑えなくなっている。



その時。


ゴルドが咆哮した。


闘気爆発。


轟音。


闘技場全体へ圧力が走る。


観客席の一部が崩壊。


実況席が吹き飛ぶ。


「拳王の全力だァァァ!!」


ゴルドの筋肉が膨張する。


まるで巨大な鬼。


地下都市最強。


その本気。



士郎は笑った。


黒い靄が漏れ出す。


歓喜していた。


身体が軽い。


視界が鮮明。


全部見える。


ゴルドの筋肉。


重心。


呼吸。


次の動き。


全部。


魔王因子。


その力がさらに士郎を押し上げていた。



ゴルドが踏み込む。


超重量拳。


真正面。


――避けない。


士郎も拳を合わせた。


激突。


轟音。


衝撃波で闘技場外壁が崩壊した。


観客席から悲鳴。


そして。


静寂。


ゴルドの目が見開かれる。


士郎の拳が。


ゴルドの拳を押し返していた。



「……ハッ」


ゴルドが笑う。


震えるほど嬉しそうに。


「お前、人間じゃねぇな」


士郎も笑った。


「ああ、そうかもな」


その瞬間。


士郎の背後。


巨大な黒い影が、一瞬だけ現れた。


王冠。


翼。


赤黒い瞳。


観客席が凍る。


「な、なんだアレ……」


エレノアの赤い瞳が細くなる。


――出始めた。


魔王。



それでも。


士郎本人は気づいていない。


ただ。


目の前の強敵しか見えていなかった。


ゴルドが笑う。


「もっと来い黒狼!!」


士郎も笑う。


「ああ」


次の瞬間。


地下都市最強同士の戦いは、ついに限界を超え始めた。

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