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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第70話 黒狼指名依頼

地下奴隷闘技場崩壊から二日。


地下闘技都市グラディウスの空気は、完全に変わっていた。


酒場。


賭博場。


裏市場。


どこでも同じ話題。


――“黒狼”。


奴隷商人ドグマを殺し。


地下闘技場を半壊させ。


奴隷たちを解放した黒コートの怪物。


今や、その名を知らない者はいなかった。



酒場。


傭兵たちが騒いでいる。


「聞いたか?」


「ドグマんとこ潰したらしいぞ」


「正気じゃねぇ……」


「しかも護衛全部殺したって」


誰かが酒を飲みながら呟く。


「……本当に怪物だな」


もう笑う者はいなかった。


地下都市の人間ほど分かる。


暴力の価値を。


だからこそ理解してしまう。


――黒狼は、本物だ。



その頃。


士郎は普通に飯を食っていた。


山盛り肉。


十人前。


リゼが呆れる。


「また増えてる……」


「腹が減る」


魔王因子の影響は、確実に強くなっていた。


身体能力。


感覚。


回復力。


全部が上がっている。


その代わり。


飢餓感も増していた。


エレノアは静かに士郎を見る。


黒い靄。


薄い。


それでも。


以前より濃い。


そして。


少しずつ士郎へ馴染み始めていた。



その時。


酒場の扉が開いた。


空気が変わる。


入ってきたのは。


全身黒スーツの男たち。


統率されている。


裏組織の人間。


周囲の客たちがざわつく。


「“黒蛇会”だ……」


「地下都市最大の組織……!」


グランの顔が険しくなる。


「面倒なの来たな」


エレノアは楽しそうだった。


「有名になった証拠ね」



黒スーツの男たちは士郎の前で止まる。


その中央。


長身の男が静かに口を開いた。


「西園寺士郎」


士郎は肉を食いながら答える。


「ああ」


男は感情のない目で言う。


「我々のボスがお前を呼んでいる」


酒場の空気が凍る。


黒蛇会。


地下闘技都市最大勢力。


賭博。


奴隷。


武器。


暗殺。


裏社会全部を牛耳る怪物組織。


そのトップからの呼び出し。


普通なら断れない。



しかし。


士郎は即答した。


「断る」


静寂。


酒場全体が固まる。


リゼが吹き出す。


「早っ!?」


グランが頭を抱える。


「だと思ったよクソが……」


黒スーツの男たちの空気が変わる。


殺気。


周囲の客たちも慌てて距離を取る。


それでも。


士郎は興味なさそうだった。


「用があるなら来い」


沈黙。


完全に喧嘩を売っていた。



長身の男は士郎を見つめる。


そして。


静かに笑った。


「なるほど」


その目が細くなる。


「確かに化け物だ」


男は名乗る。


「俺はレオン」


黒蛇会幹部。


地下都市最強クラスの一人。


その瞬間。


酒場がざわついた。


「レオンだと……!?」


「黒蛇会の処刑人……!」


百人以上を処刑してきた裏社会の怪物。


それでも。


士郎は少し笑った。


「強いのか?」


レオンも笑う。


獰猛に。


「試してみるか?」


その瞬間。


酒場の空気が、一気に殺気へ染まった。

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