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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第69話 奴隷商人の最期

地下奴隷闘技場。


ドグマが逃げ出した。


悲鳴を上げながら。


脂肪だらけの身体を揺らし。


転びそうになりながら。


観客たちは道を空ける。


誰も助けない。


助けられない。


今この場で、一番強い生物が誰か。


全員理解してしまったから。



「ひ、ひぃっ!!」


ドグマは必死に走る。


護衛は全滅。


“虐殺鬼”ガルドですら殺された。


もう終わりだった。


背後から。


ゆっくり足音が響く。


コツ。


コツ。


コツ。


士郎。


歩いているだけ。


なのに。


ドグマには逃げ切れる未来が見えなかった。



観客席も静まり返っていた。


誰も叫ばない。


誰も笑わない。


ただ。


見ている。


――処刑を。



ドグマは出口へ飛び込む。


しかし。


次の瞬間。


目の前へ黒い影が現れた。


「……あ?」


士郎だった。


一瞬。


本当に一瞬で回り込んでいた。


ドグマの顔が引きつる。


「ば、化け――」


拳。


ドゴォォォォン!!!


ドグマの身体が壁へ叩きつけられる。


石壁陥没。


血飛沫。


観客席が震える。



それでも。


ドグマはまだ死なない。


這いずる。


「ま、待て!!」


血まみれ。


涙。


鼻水。


完全に醜態だった。


「か、金か!?」


「女か!?」


「奴隷でも何でもやる!!」


士郎は静かだった。


黒い瞳に感情がない。


ドグマは本能で理解する。


――通じない。


この男には。



その時。


檻の中から視線が集まる。


奴隷たち。


獣人。


亜人。


子供。


みんなボロボロだった。


それでも。


その目だけは、ドグマを見ていた。


憎悪で。



リゼが小さく呟く。


「……最低」


グランも吐き捨てる。


「死んだ方がマシなクズだな」


エレノアは静かに士郎を見ていた。


どうするのか。



ドグマは泣き叫ぶ。


「た、助けてくれぇぇぇ!!」


士郎はゆっくり近づく。


そして。


静かに言った。


「お前」


ドグマが震える。


士郎の目が細くなる。


「うるさい」


次の瞬間。


拳。


ドゴォォォォン!!!


ドグマの頭部が消し飛んだ。


静寂。


地下奴隷市場支配者。


ドグマ。


死亡。



沈黙が続く。


そして。


檻の中の奴隷たちが、呆然と士郎を見る。


理解できない。


今まで絶対だった男が。


一瞬で死んだ。



士郎は興味なさそうに血を払う。


そして。


檻を見る。


鎖。


鉄格子。


泣いている子供。


痩せ細った奴隷たち。


その時。


士郎が拳を振るった。


轟音。


鉄格子が吹き飛ぶ。


檻が開く。


奴隷たちが目を見開く。


士郎は短く言った。


「帰れ」


静寂。


そして。


誰かが泣き出した。



観客席では、誰も動けなかった。


今、自分たちは何を見たのか。


黒コートの怪物。


殺し屋。


地下都市を暴れる災害。


――なのに。


奴隷を解放した。


理解できない。



グランが苦笑する。


「お前、ほんと訳分かんねぇな」


リゼは少し笑った。


「でも、嫌いじゃないよ」


エレノアは静かに士郎を見る。


そして。


妖艶に笑う。


「優しい魔王ね」


士郎は少し眉をひそめた。


「気持ち悪いこと言うな」


その瞬間。


地下奴隷闘技場に、初めて笑い声が響いた。

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