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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第1章 『黒衣の転生者編』

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第7話 黒狼

オーク掃討の翌朝。

城壁都市ルーガスは騒然としていた。


酒場。

市場。

冒険者ギルド。


話題は一つ。


昨夜の怪物。


「聞いたか?」


「オークの群れを一人で潰したらしい」


「しかもB級のオークジェネラルまで……」


「嘘だろ?」


誰も信じていない。


だが。

現場を見た冒険者たちは全員、青い顔で頷いた。


現実だった。



冒険者ギルド。


朝だというのに、人が溢れていた。


その中心。


黒いコートの男。


西園寺士郎。


ギルド内の視線が集中している。


恐怖。

好奇。

警戒。


士郎は気にしない。


受付カウンターへグレイブウルフやオークの討伐証明を置く。


受付嬢の手が震えていた。


「……ほ、本当に全部一人で?」


「ああ」


「オークジェネラルも……?」


「弱かった」


ギルドが静まり返る。


弱かった。

B級危険種を。


受付嬢は半泣きだった。


「規格外すぎる……」


横でリゼが頭を抱える。


「ほんとに思ったことそのまま言うんだから……」


その時。

奥からギルドマスターが現れた。


白髪混じりの壮年。

隻眼。

大柄。


周囲の空気が変わる。


「マスターだ……」


「ダグラス……!」


ギルドマスター、ダグラス。

元A級冒険者。

この街最強クラス。


ダグラスは士郎を見る。


数秒。


沈黙。


そして。


「お前、本当に人間か?」


士郎は即答した。


「たぶんな」


ギルド内で吹き出す者が出る。


だがダグラスは笑わなかった。


目が本気だった。


士郎の身体から漂う空気。


戦場の匂い。


そして何より。


“壊れ方”。


普通の強者ではない。


ダグラスは腕を組む。


「レオンから話は聞いた」


「そうか」


「お前、何者だ」


士郎は少し考える。


だが答えは変わらない。


「殺し屋だ」


ダグラスの眉がわずかに動いた。


妙に納得した。


この男の動きは、冒険者じゃない。


軍人でもない。


純粋な暗殺者。


人を殺すためだけに完成された技術。

だから異常に強い。


ダグラスは低く言う。


「この街で暴れるな」


「暴れるつもりはない」


「信用できんな」


その通りだった。


士郎自身も、自分が普通じゃないことは分かっている。


だが。

抑える気もあまりない。


その時。


ギルドの扉が勢いよく開いた。


血だらけの男が転がり込む。


冒険者だった。


「た、助けてくれ……!」


ギルド内が騒然となる。


ダグラスが駆け寄る。


「何があった!」


男は震えながら叫んだ。


「東の鉱山が……!」


息が乱れる。

恐怖で顔が歪んでいた。


「盗賊団に占拠された!!」


空気が変わる。


レオンの目が細くなる。


「どこの連中だ」


男は唇を震わせた。


「“赤蛇”……!」


ざわめき。


冒険者たちの顔色が変わる。


リゼが小さく呟く。


「赤蛇って……」


レオンが舌打ちする。


「最悪だな」


士郎が聞く。


「強いのか」


ダグラスが答える。


「この辺りじゃ最大級の盗賊団だ」


数百人規模。

元傭兵。

元騎士。

殺し屋。

犯罪者の集まり。


しかも。


「鉱山の住民が人質に取られてる」


ギルド内が重くなる。


レオンが剣へ手を置く。


「討伐隊を出すしかないな」


だが。

士郎は静かに聞いた。


「数は」


「……百以上」


士郎は少し黙る。


そして。


「少ないな」


空気が止まった。


リゼが頭を抱える。


「もう嫌この人……」


ダグラスが士郎を見る。


「まさか一人で行く気か」


「問題あるか?」


ダグラスは本気で悩んだ。


止めるべきか。


だが。

この男なら、本当にやりかねない。


レオンがため息を吐く。


「好きにしろ」


「おいレオン!?」


「どうせ止まらん」


その通りだった。


士郎は黒いコートを翻す。


そして歩き出す。


その背中を見ながら、ギルド内の誰かが呟いた。


「黒狼……」


いつの間にか。

誰かがそう呼び始めていた。


黒いコート。


獣みたいな強さ。


戦場を喰らう怪物。


西園寺士郎。


その異名が、少しずつ街に広がり始めていた。

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