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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第66話 奴隷闘技場

地下闘技都市グラディウス。


昨夜から、一人の新人の噂が広がり始めていた。


バルガンを倒した黒コート。


“紫電”カインを沈めた素手の男。


まだ名前を知らない者も多い。


それでも。


一部の観客たちは、すでにこう呼び始めていた。


――黒狼。



酒場。


賭博場。


裏路地。


どこでも同じ話題だった。


「昨日の試合見たか?」


「カイン負けたってマジかよ……」


「しかも素手だぞ」


「ありえねぇ……」


半信半疑。


しかし。


全員少しずつ理解し始めていた。


――あれは本物だ、と。



その頃。


士郎たちは地下都市内部を歩いていた。


リゼは周囲を警戒している。


「なんか視線増えてない?」


「増えてるわね」


エレノアは楽しそうだった。


実際。


裏組織。


闘技場運営。


賭博屋。


奴隷商人。


全員が士郎へ注目し始めている。


地下都市の怪物たちが、“黒コートの新人”を認識し始めた。



その時。


遠くから歓声が響いた。


しかし。


普通の闘技場とは違う。


歓声が濁っている。


悲鳴が混ざっていた。


リゼが顔をしかめる。


「……嫌な感じ」


後ろを歩いていたグランも、露骨に眉をひそめた。


「こっちは上級闘技場じゃねぇな」


地下闘技都市に来てから、グランは地下都市の案内役をしていた。


元傭兵の経験もあり、この手の裏社会には詳しい。


だからこそ分かる。


この歓声は異常だった。



路地を抜ける。


そこにあったのは。


地下奴隷闘技場。


鉄格子。


鎖。


檻。


そして。


痩せ細った奴隷戦士たち。


観客たちは酒を飲みながら笑っていた。


「殺せ!!」


「立てよゴミ!!」


「次死んだら女出せ!!」


完全な地獄だった。



闘技場中央。


獣人の少年が倒れていた。


まだ子供。


血まみれ。


対するのは、大男。


斧を持った闘士。


観客は熱狂している。


少年は立てない。


それでも。


審判は笑っていた。


「続行ォ!!」


リゼの顔が青ざめる。


「最低……」


グランも険しい顔になる。


「胸糞悪ぃな」


しかし。


士郎だけは静かだった。


その黒い瞳が。


闘技場上層席を見ている。


そこには。


太った男。


大量の護衛。


地下奴隷闘技場のオーナー。


ドグマ。


観客たちが媚びるように笑っている。


エレノアが静かに言う。


「この辺りの奴隷市場を支配してる男よ」



その時。


獣人少年の腕が斧で叩き潰された。


絶叫。


観客大歓声。


リゼが目を逸らす。


「……最悪」


士郎は静かだった。


だが。


エレノアは気づく。


黒い靄。


少し濃くなった。


士郎がゆっくり歩き出す。


リゼが振り向く。


「士郎?」


士郎は止まらない。


闘技場へ降りていく。


観客たちがざわついた。


「なんだアイツ?」


「乱入か?」


審判が怒鳴る。


「止まれ!!」


次の瞬間。


ドゴォォォォン!!!


審判の身体が吹き飛んだ。


壁へ激突。


沈黙。


士郎は静かに獣人少年の前へ立つ。


斧闘士が怒鳴る。


「誰だテメェ!!」


士郎は答えない。


ただ。


静かに拳を握る。


観客席がざわつく。


「黒コート……」


「まさか昨日の……?」


上層席のドグマも目を細めた。


そして。


士郎は笑った。


獰猛に。


「気に入らんな」


その瞬間。


地下奴隷闘技場の空気が変わった。

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