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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第65話 紫電絶影

地下闘技場。


空気が凍っていた。


“紫電”カイン。


地下都市上位ランカー。


その両剣から、異様な圧力が溢れている。


観客たちが息を呑む。


「来るぞ……!」


「カインの本気だ……!」


実況も震えていた。


「し、紫電流最終奥義ィィィ!!」



カインが静かに構える。


呼吸。


重心。


気配。


全部が消える。


まるで。


存在そのものが薄くなったようだった。


リゼが顔をしかめる。


「……消えた?」


エレノアの赤い瞳が細くなる。


「完成されてるわね」


暗殺剣。


気配遮断。


殺意すら表へ漏らさない。


地下都市でも最高峰。


――それでも。


士郎は笑っていた。



次の瞬間。


カインが消える。


完全に。


観客席がどよめく。


「いない!?」


「どこだ!?」


実況ですら目で追えない。


しかし。


士郎だけは静かだった。


黒い瞳。


わずかに細くなる。


見えていた。


空気の揺れ。


筋肉の軋み。


空間の違和感。


そして。


“斬撃が来る軌道”そのものが。


アガルタ以降。


魔王因子は士郎の感覚そのものを異常強化していた。


本人すら自覚していない領域で。



「遅い」


その瞬間。


士郎の肘が動く。


轟音。


カインが強制的に姿を現した。


観客席が凍る。


「見えてたのか!?」


「嘘だろ!?」


カイン自身も驚愕していた。


今の一撃。


完全な死角。


完全な気配遮断。


なのに。


この男は反応した。



次の瞬間。


カインが再加速する。


紫電流最終奥義。


“紫電絶影”。


超高速斬撃。


連続。


死角。


フェイント。


全部が混ざる。


観客には何も見えない。


ただ。


闘技場へ無数の斬撃痕だけが刻まれていく。



士郎の身体から血が飛ぶ。


肩。


脇腹。


背中。


深い。


しかし。


士郎は笑っていた。


「いい」


カインの顔が歪む。


理解できない。


なぜ倒れない。


なぜ笑える。


普通の人間なら、とっくに死んでいる。



その時。


士郎が踏み込む。


最小動作。


最短距離。


カインの剣を掌で逸らす。


同時に。


膝蹴り。


肘打ち。


喉への拳。


全部必殺。


カインが無理やり後退する。


しかし。


遅い。


士郎の拳が腹へ突き刺さる。


轟音。


カインが血を吐いた。


観客席がどよめく。


「また読んだ!!」


「なんなんだアイツ!!」



士郎は静かに歩く。


血まみれ。


それでも。


まるで効いていない。


カインは理解し始めていた。


この男。


単純に強いんじゃない。


殺しに特化しすぎている。


技術。


経験。


身体能力。


全部が噛み合っている。


しかも今は。


そこへ、説明不能な“何か”まで加わっている。


――だから隙がない。



カインは笑った。


血を吐きながら。


「最高だ……」


士郎も笑う。


「ああ」


次の瞬間。


両者が同時に踏み込んだ。


轟音。


紫の斬撃。


黒い拳。


真正面激突。


観客たちは息を呑む。


そして。


静寂。


カインの剣が止まっていた。


士郎の手が。


刃を掴んでいる。


血が流れる。


それでも。


止めていた。


カインの目が見開かれる。


その瞬間。


士郎の拳が動いた。


ドゴォォォォォン!!!


カインの身体が吹き飛ぶ。


闘技場を転がり。


壁へ激突。


石壁が崩落する。


静寂。


そして。


カインは笑いながら崩れ落ちた。


「……負けだ」


地下闘技都市上位ランカー。


“紫電”カイン。


敗北。



観客席が爆発した。


「うおおおおおお!!!」


「なんだアイツ!!」


「本当に新人かよ!!」


実況が叫ぶ。


「また勝ったァァァァ!! 黒コートの怪物ゥゥゥゥ!!」


歓声。


恐怖。


熱狂。


全部混ざっていた。


そして。


誰もが理解し始めていた。


この男。


地下闘技都市そのものを壊しかねない。

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