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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第63話 見えない斬撃

地下闘技場。


観客席がざわつく。


誰も見えなかった。


“紫電”カインの動きが。


ただ。


次の瞬間には。


士郎の頬から血が飛んでいた。


実況が絶叫する。


「速いィィィ!! 速すぎるゥゥゥ!!」


歓声。


熱狂。


観客たちは沸き上がる。


「決まった!!」


「やっぱカインだ!!」


「新人終わりだァ!!」



――それでも。


士郎は笑っていた。


頬の血を指で拭う。


「いいな」


カインの目が細くなる。


普通なら。


今の一撃で動揺する。


しかし。


この男は違う。


むしろ。


嬉しそうだった。



次の瞬間。


カインが再び消える。


超高速移動。


残像。


斬撃。


士郎の肩。


脇腹。


太腿。


次々に血が飛ぶ。


観客が熱狂する。


「見えねぇ!!」


「完全に押してる!!」


リゼが顔をしかめる。


「士郎、避けてない……?」


エレノアは静かに答える。


「違うわ」


赤い瞳が細くなる。


「見てる」



その瞬間。


士郎の腕が動いた。


ガシッ。


静寂。


士郎の手が。


カインの剣を掴んでいた。


観客席が凍る。


実況すら止まった。


カインの目が見開かれる。


「……は?」


士郎は笑う。


「捕まえた」


次の瞬間。


拳。


ドゴォォォォン!!!


カインの身体が吹き飛ぶ。


闘技場を転がり、壁へ激突。


石壁が砕ける。


観客席がどよめいた。


「掴んだ……?」


「見えてたのか!?」



カインは血を吐きながら立ち上がる。


それでも。


笑っていた。


獰猛に。


「なるほど……」


紫の瞳が鋭くなる。


「化け物か」


士郎は静かだった。


「お前も悪くない」



次の瞬間。


カインの空気が変わる。


殺気。


鋭い。


観客席ですら息苦しくなる。


実況が震える声で叫ぶ。


「出るのか……!」


カインが二本の細剣を交差させる。


紫電流。


奥義構え。


観客たちが総立ちになる。


「終わりだ!!」


「あれ喰らって立ってた奴いねぇぞ!!」


リゼが顔を曇らせる。


「まずいの?」


エレノアは笑った。


「少しね」


――それでも。


士郎は笑っていた。


黒い瞳。


獰猛に。


「来い」



次の瞬間。


カインが消えた。


今までよりさらに速い。


紫の閃光。


連続斬撃。


空間そのものを裂く超高速剣舞。


観客にはもう見えない。


ただ。


闘技場に斬撃跡だけが増えていく。


そして。


静寂。


カインが士郎の背後へ現れる。


観客たちが息を呑む。


決まった。


誰もがそう思った。


しかし。


士郎は立っていた。


血まみれで。


そして。


笑っていた。


カインの顔から、初めて笑みが消える。


その瞬間。


士郎の拳が動いた。

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