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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第62話 紫電

地下闘技都市グラディウス。


昨夜の試合は、街中で噂になっていた。


酒場。


賭博場。


裏路地。


どこへ行っても話題は同じ。


――“バルガンを倒した新人”。


それでも。


まだ誰も信じ切れていなかった。



酒場。


傭兵たちが酒を飲みながら騒いでいる。


「昨日の試合見たか?」


「バルガンが負けたってマジかよ」


「どうせ八百長だろ」


「いや、俺見てたけどアレはヤバかった……」


空気は半信半疑。


しかし。


一つだけ共通していた。


全員、少し怖がっている。



その頃。


士郎本人は普通に飯を食っていた。


山盛り肉。


五人前。


リゼが呆れる。


「ほんとよく食べるね……」


「腹が減る」


アガルタ以降、さらに酷い。


戦うたび。


黒い力を使うたび。


身体が異常に飢える。


エレノアは静かに士郎を見る。


黒い靄。


薄い。


それでも。


完全には消えなくなっていた。



その時。


酒場の扉が開く。


空気が変わる。


入ってきたのは。


細身の男。


長い黒髪。


紫の瞳。


腰には二本の細剣。


周囲の客たちがざわつく。


「“紫電”のカインだ……」


「闘技場ランカー……!」


地下闘技都市上位戦士。


超高速二刀流。


試合相手を百人以上斬り殺してきた男。


そのカインが、士郎の前で止まる。


紫の瞳が細くなる。


「お前か」


士郎は肉を食いながら答える。


「ああ」


「バルガンを倒したっていう新人は」


士郎は興味なさそうだった。


「そうらしいな」


カインは笑う。


獰猛に。


「なら、試させてもらう」


リゼが頭を抱える。


「また始まった……」



周囲の客たちは盛り上がっていた。


「おいおい!!」


「カインが直々に来たぞ!」


「流石に新人じゃ無理だろ」


「バルガン戦も偶然かもしれねぇしな」


まだ誰も確信していない。


士郎が本当に怪物なのか。


だから。


みんな見たがっている。


――本物かどうかを。



数時間後。


地下闘技場。


再び満員。


観客たちは熱狂していた。


実況が叫ぶ。


「現れたァァァ!! 昨日バルガンを沈めた新人ォォォ!!」


歓声。


絶叫。


熱狂。


――それでも。


まだ半分は疑っている。


偶然か。


本物か。


対するカインは、静かに剣を抜く。


細い。


美しい剣。


しかし。


殺気は鋭い。


カインは笑う。


「拳だけでどこまでやれるかな」


士郎は静かだった。


そして。


「試してみろ」


次の瞬間。


カインが消えた。


超高速。


観客席から悲鳴が上がる。


速すぎて見えない。


実況すら目で追えない。


それでも。


士郎だけは笑っていた。


「速いな」


その瞬間。


士郎の頬から血が飛んだ。

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