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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第四章『地下闘技都市編』

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第61話 拳で語る男

地下闘技場。


静寂。


誰も動けなかった。


巨鬼化したバルガン。


地下都市最強。


その腕が。


たった一撃で爆散した。


観客席の誰かが呟く。


「……嘘だろ」


実況すら止まっていた。


理解できない。


今、何が起きたのか。



闘技場中央。


バルガンは自分の腕を見る。


砕けた。


いや。


内側から潰された。


骨ごと。


筋肉ごと。


完全に。


ゆっくり士郎を見る。


黒いコート。


血まみれ。


それでも。


静かに立っている。


その姿に。


初めて寒気を覚えた。


「お前……」


士郎は少し笑う。


「まだやるか?」



観客席がざわつき始める。


「なんなんだアイツ……」


「バルガンが押されてる……?」


「いや、違う」


誰かが震える声で言った。


「あの黒コートの方が怪物だ」



バルガンは笑った。


痛みで顔を歪めながら。


それでも。


嬉しそうに。


「最高だな……」


士郎の目が細くなる。


バルガンは負けを認めていなかった。


むしろ。


もっと殴り合いたがっている。


士郎は少し笑う。


「いい目だ」



次の瞬間。


バルガンが残った腕で突っ込む。


最後の全力。


闘気最大出力。


空気が裂ける。


実況が絶叫する。


「決着ゥゥゥゥゥ!!!」


士郎は避けない。


真正面から踏み込む。


拳。


激突。


轟音。


そして。


静寂。


バルガンの拳が止まっていた。


士郎の拳が。


バルガンの胸を貫いていた。


血飛沫。


巨体が揺れる。



観客席が完全に沈黙する。


誰も歓声を上げない。


怖かった。


今、目の前で起きたものが。


士郎は拳を引き抜く。


バルガンは数歩よろめいた。


そして。


笑う。


満足そうに。


「……負けた」


崩れ落ちる。


地下闘技都市最強。


“巨人殺し”バルガン。


敗北。



静寂。


――その直後。


歓声が爆発した。


「うおおおおおおお!!!」


「なんだアイツ!!」


「化け物だァァァ!!」


熱狂。


恐怖。


興奮。


全部混ざっていた。


実況が叫ぶ。


「勝者ァァァァ!! 謎の挑戦者ァァァァ!!」


観客たちは士郎の名前を知らない。


それでも。


もう全員理解していた。


とんでもない怪物が現れた。



リゼはため息を吐く。


「絶対また面倒なことになる……」


エレノアは笑う。


「もうなってるわよ」


実際。


闘技場関係者。


裏組織。


賭博屋。


全員が士郎を見ていた。


獲物を見る目で。


あるいは。


災害を見る目で。



その時。


倒れたバルガンが笑いながら言った。


「名前……聞いてなかったな」


士郎は静かに答える。


「西園寺士郎」


バルガンは笑う。


そして。


観客席へ向かって叫んだ。


「覚えとけ!!」


闘技場全体が静まる。


バルガンは血を吐きながら笑った。


「コイツは本物の怪物だ!!」


沈黙。


その言葉が。


地下闘技都市グラディウス全域へ広がっていく。


黒狼。


西園寺士郎。


その名が。


地下世界へ刻まれた瞬間だった。

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