第58話 暴力都市
地下闘技都市グラディウス。
異世界最大の無法地帯。
犯罪者。
傭兵。
奴隷商人。
貴族。
魔族。
亜人。
“強さ”だけを信仰する怪物たちが集まる都市。
そこでは。
法律より拳が重かった。
◇
地下巨大空洞。
無数の灯り。
歓声。
酒。
血。
闘技場では、今日も誰かが殺されている。
観客たちは熱狂していた。
「殺せぇぇぇ!!」
「頭潰せ!!」
「立てゴミが!!」
完全な狂気。
――それでも。
士郎は少し笑った。
「悪くない」
リゼが顔をしかめる。
「最悪だよこんな街……」
エレノアは楽しそうだった。
「あなたには居心地良さそうね」
「静かでいい」
「どこが!?」
◇
アガルタ崩壊後。
士郎たちは情報収集のため、この都市へ来ていた。
理由は一つ。
“魔王”。
神代文明。
原初の残滓。
その痕跡が、この都市に集まっているらしい。
そしてもう一つ。
この都市には、“世界最強クラス”が集まる。
それだけで。
士郎には十分だった。
◇
通りを歩く。
すると。
周囲の視線が集まり始めた。
黒いコート。
異常な殺気。
そして。
隣には灰の魔女。
誰もが察する。
――関わってはいけない。
しかし。
無法都市には馬鹿もいる。
大男が道を塞いだ。
二メートル超。
筋肉の塊。
片目に傷。
闘技場常連の用心棒だった。
「おい兄ちゃん」
士郎は止まらない。
男が肩を掴む。
「無視してんじゃ――」
次の瞬間。
ドゴォォォォン!!!
男の身体が吹き飛んだ。
壁へ激突。
石壁が陥没する。
静寂。
周囲のチンピラたちの顔が凍る。
士郎は振り返りもしない。
「邪魔だ」
リゼがため息を吐く。
「また始まった……」
◇
その時。
闘技場側から歓声が響いた。
巨大な円形闘技場。
数万人規模。
観客は総立ち。
中央では、一人の巨漢が相手を握り潰していた。
血飛沫。
歓声。
実況が叫ぶ。
「出たぁぁぁ!! 百戦無敗!! 巨人殺しのバルガンだぁぁぁ!!」
巨漢――バルガン。
地下闘技都市現チャンピオン。
人間離れした怪力。
これまで挑戦者を百人以上殺している怪物。
そのバルガンが。
観客席の士郎を見た。
沈黙。
そして。
笑った。
獰猛に。
「……いい目してるな」
士郎も笑う。
「お前、強いのか?」
その瞬間。
闘技場全体がざわついた。
「誰だあいつ……」
「バルガンに喧嘩売ったぞ……!」
エレノアは面白そうに笑う。
リゼは頭を抱えた。
「入って五分で問題起こさないで!!」
◇
バルガンは立ち上がる。
巨大な身体。
圧倒的威圧感。
そして。
士郎を指差した。
「お前、降りてこい」
歓声。
熱狂。
観客たちが叫ぶ。
新しい獲物。
新しい殺し合い。
地下闘技都市グラディウスが、さらに熱狂していく。
その中心で。
士郎は静かに笑った。
「いい」
第四章『地下闘技都市編』 開幕。




