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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第56話 原初の残滓

古代都市アガルタ。


崩壊。


塔が倒れ。

地面が裂け。

神代文明の遺跡が、音を立てて死んでいく。


その中心。


黒狼――西園寺士郎。


そして。


“原初の魔王の残滓”。



黒い玉座の上。


王冠を被った異形が、ゆっくり立ち上がる。


巨大。


禍々しい。


黒い靄。


まるで。


士郎の背後に現れる影、そのものだった。


リゼは震えていた。


「なんで……似てるの……」


エレノアは静かに答える。


「当然よ」


赤い瞳が細くなる。


「士郎の中にいる“魔王”の元だから」


沈黙。


グランの顔が引きつる。


「おい待て、今さらっとヤバいこと言ったぞ」



その時。


原初の残滓が、士郎へ手を伸ばした。


黒い波動。


空間が歪む。


普通の人間なら、存在ごと潰される。


それでも。


士郎は笑った。


真正面から踏み込む。


拳。


轟音。


黒波動と激突。


都市全体が揺れる。



しかし。


今までの敵とは違う。


原初の残滓は、士郎の拳を片手で止めた。


静寂。


士郎の目が細くなる。


「……いい」


初めてだった。


真正面から、純粋な力で止められたのは。


残滓の赤黒い瞳が士郎を見る。


そして。


笑う。


【継承者】


頭へ直接響く声。


低い。


古い。


世界の底から聞こえるような声。


士郎は構わず拳を叩き込む。


轟音。


残滓の顔面が揺れる。


それでも。


崩れない。


次の瞬間。


黒い腕が士郎を吹き飛ばした。


建物を貫通。


都市が崩れる。


リゼが絶叫する。


「士郎!!」



煙。


――その直後。


黒い影が飛び出した。


士郎。


血まみれ。


それでも笑っている。


「最高だ」


グランが頭を抱える。


「もう嫌だこの戦闘狂……」



エレノアは静かに士郎を見る。


黒い靄。


限界寸前。


あと少しで、本当に“向こう側”へ行く。


しかし。


士郎自身は気づいていない。


ただ。


強敵との戦いに熱狂しているだけ。


エレノアは小さく呟く。


「まだ壊れないでよ」



その時。


原初の残滓が両腕を広げた。


黒い魔力が都市中へ広がる。


瞬間。


アガルタ内部に眠っていた古代兵器群が、一斉に起動した。


赤い光。


無数。


数千。


リゼの顔が青ざめる。


「うそ……」


グランが絶望した顔をする。


「軍隊かよ……!」


エレノアの目が細くなる。


「……王都一つ滅ぼせるわね」



古代兵器群が士郎を見た。


【魔王確認】

【殲滅開始】


次の瞬間。


一斉砲撃。


光の雨。


都市そのものが吹き飛ぶ。


それでも。


士郎は笑った。


そして。


前へ出る。


砲撃を受けながら。


黒い靄が全身から噴き出す。


拳。


蹴り。


肘。


人体破壊術。


古代兵器群が次々砕け散る。


その姿は。


もう人間ではなかった。


災厄。


破壊。


戦場の悪魔。


そのもの。



原初の残滓は、そんな士郎を静かに見つめる。


そして。


初めて。


満足そうに笑った。


【やはり】

【貴様は器だ】


その瞬間。


士郎の背後。


巨大な黒い魔王の影が、完全な姿で現れ始める。


王冠。


赤黒い瞳。


巨大な翼。


世界を威圧する存在感。


エレノアの顔から、ついに笑みが消えた。


「……まずいわね」


リゼが震える。


「な、何が起きてるの……」


エレノアは士郎を見つめる。


そして。


静かに呟いた。


「魔王が、目覚め始めてる」

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