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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第55話 魔王の玉座

古代都市アガルタ。

最深部。


黒門の奥から現れた“玉座”。


それは、生きていた。


黒い肉塊。

脈動する血管。

無数の赤い眼。

巨大な王冠状の骨。


そして。


その中心に座る“何か”。


人型に近い。


――だが、人間ではない。


世界そのものが拒絶するような存在感。


リゼの身体が震える。


「……なに、あれ」


声が掠れていた。


本能が理解してしまう。


あれを見てはいけない。



エレノアですら笑みを消していた。


赤い瞳が細くなる。


「神代文明……本当に狂ってるわね」


グランは武器を握る手を強張らせた。


「おいおい……あれも兵器か?」


エレノアは静かに首を振る。


「違う」


そして。


ゆっくり呟く。


「“魔王の玉座”よ」


沈黙。


空気が凍った。



その時。


玉座中央の“何か”が動いた。


赤黒い瞳。


ゆっくり士郎を見る。


瞬間。


古代都市全域が震えた。


【魔王因子確認】

【適合率……測定不能】

【継承資格認定開始】


機械音声。


しかし。


その声には、どこか“歓喜”が混じっていた。


リゼが叫ぶ。


「継承って何!?」


エレノアの表情が険しくなる。


「士郎から離れなさい」


珍しく本気だった。


危険。


今この場は、本当に危険。



それでも。


士郎は笑っていた。


「強いな」


そこしか見ていない。


玉座から溢れる圧力。

殺気。

破壊衝動。


その全てが、士郎を熱くしていた。


死ねるかもしれない。


その感覚が心地いい。



次の瞬間。


魔王の玉座から黒い腕が伸びた。


巨大。


建物サイズ。


超高速。


士郎へ襲いかかる。


轟音。


士郎は拳で迎撃。


激突。


衝撃波。


空間が歪む。


しかし、止まらない。


黒腕が士郎を押し込む。


地面が陥没。


リゼが悲鳴を上げる。


「士郎!!」


その中心で。


士郎は笑った。


「いい」


完全に戦闘狂だった。



士郎が踏み込む。


拳。


連撃。


黒腕が砕ける。


再生。


さらに別の腕が伸びる。


無数。


空間を埋め尽くす。


エレノアが前へ出た。


灰色魔法陣展開。


「邪魔」


空間圧縮。


黒腕の群れが捻じ潰される。


それでも。


玉座本体は揺るがない。


エレノアの目が細くなる。


「相当古いわね……」



その時。


玉座中央の“何か”が、ゆっくり立ち上がった。


巨大。


黒いローブ状の肉。


王冠。


赤い瞳。


そして。


士郎と同じ。


黒い靄。


リゼの顔が凍る。


「……嘘」


似ていた。


あまりにも。


士郎の背後に現れる黒い影と。


エレノアは静かに呟く。


「原初の魔王の残滓……」


その瞬間。


士郎の身体から黒い靄が噴き出した。


今までで最大。


空気が重い。


都市全体が唸る。


玉座の“何か”が、士郎へ手を伸ばした。


【継承者】


機械音声ではない。


直接、頭へ響く声。


低い。


古い。


世界の底から響くような声。


リゼが震える。


「やめて……」


それでも。


士郎は笑った。


獰猛に。


「面白い」



次の瞬間。


玉座から黒い波動が放たれる。


轟音。


アガルタ全体が崩壊を始めた。


グランが叫ぶ。


「都市が崩れるぞ!!」


それでも。


士郎は動かない。


玉座を見ている。


いや。


その奥にいる“何か”だけを見ていた。


そして。


ゆっくり拳を握る。


「お前」


黒い瞳が細くなる。


「強いな」


その瞬間。


原初の魔王の残滓が、初めて笑った。

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