第54話 魔王城への門
古代都市アガルタ最深部。
巨大な黒門が、ゆっくり開いていく。
轟音。
地面が震える。
門の表面に刻まれた古代文字が赤黒く発光していた。
溢れ出す魔力。
重い。
濃い。
まるで。
世界そのものが腐っているみたいな気配。
グランが顔を引きつらせる。
「なんだよ……これ……」
リゼは息苦しそうに胸を押さえた。
普通の人間では立っているだけで限界だった。
だが。
士郎だけは静かだった。
むしろ。
笑っている。
「いいな」
◇
エレノアは黒門を見上げる。
赤い瞳が細くなる。
「神代文明は、本当に存在していたのね」
リゼが聞く。
「どういうこと?」
エレノアは静かに答える。
「魔王城は伝説だったの」
神話。
御伽話。
“原初の魔王”が支配していた城。
神々と戦争を起こした場所。
世界を半壊させた災厄の中心。
だが。
目の前にある。
実在している。
◇
その時。
黒門の奥から、重い足音が響いた。
ゴォン。
ゴォン。
巨大。
空気が震える。
グランが武器を握る。
「また来るぞ……!」
次の瞬間。
門の奥から現れた。
黒鎧。
巨大盾。
長槍。
人型。
だが。
人間ではない。
古代魔兵。
しかも。
今までの機兵とは別格。
その数。
数十。
いや。
百以上。
リゼの顔が青ざめる。
「うそでしょ……」
エレノアですら少し眉をひそめた。
「魔王城親衛兵……」
◇
古代魔兵たちの赤眼が一斉に士郎を向く。
そして。
機械音声。
【魔王因子確認】
【主帰還認定開始】
沈黙。
リゼの顔が凍る。
グランも絶句した。
主。
帰還。
つまり。
こいつらは。
士郎を――。
だが。
士郎本人は興味なさそうだった。
「強いのか?」
エレノアが笑う。
「本当にそこしか見てないのね」
◇
次の瞬間。
古代魔兵たちが一斉突撃した。
轟音。
地面が砕ける。
超高速。
完全武装。
だが。
士郎は笑った。
そして。
真正面から突っ込む。
拳。
ドゴォォォォン!!
古代魔兵の頭部が吹き飛ぶ。
さらに踏み込み。
膝蹴り。
肘打ち。
人体破壊術。
黒鎧が砕け散る。
だが。
数が多い。
背後から長槍が迫る。
その瞬間。
灰色魔法陣。
エレノア。
空間ごと槍を圧縮粉砕する。
「後ろくらい見なさい」
士郎は振り返らない。
「必要ない」
「自信家」
「お前がいる」
沈黙。
リゼが固まる。
グランが吹き出す。
「今の口説いてたのか?」
エレノアは一瞬だけ目を見開き。
そして。
妖艶に笑った。
「嬉しいわ」
リゼが頭を抱える。
「なんでこの状況でそんな空気になるの!?」
◇
戦闘は激化する。
古代魔兵。
一体一体が国家騎士団長級。
普通なら絶望。
だが。
士郎とエレノアは止まらない。
黒狼。
灰の魔女。
二つの災厄が並んで暴れていた。
◇
その時。
黒門の奥。
さらに濃い魔力。
空気が変わる。
エレノアの顔から笑みが消えた。
「……来る」
士郎の口元が歪む。
強い。
今までで一番濃い。
次の瞬間。
黒門の奥から。
巨大な“玉座”が現れた。
否。
違う。
玉座そのものが生きている。
黒い肉。
無数の眼。
脈動する魔力。
そして。
その中心。
王冠を被った“何か”が、静かに士郎を見下ろしていた。
その瞬間。
古代都市アガルタ全体が震えた。




