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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第53話 原初の影

古代都市アガルタ。


崩壊。


塔が倒れ。


地面が裂け。


神代文明の遺跡そのものが悲鳴を上げていた。


その中心。


黒狼――西園寺士郎。


そして。


対魔王最終兵装。


古代騎士。



古代騎士は後退っていた。


兵器であるはずなのに。


恐怖している。


赤い単眼が激しく明滅する。


【原初魔王反応】


【危険度測定不能】


【緊急殲滅対象】


機械音声に、初めて“焦り”のようなものが混じる。


リゼは震えていた。


今の黒い影。


あれは何だったのか。


士郎の背後に現れた巨大な存在。


見てはいけないものを見た気がした。



士郎は静かに歩く。


血まみれ。


全身傷だらけ。


それでも。


止まらない。


古代騎士が巨大剣を構える。


背後の光輪が最大展開。


都市中の魔力が収束していく。


エレノアの赤い瞳が細くなる。


「アガルタの全エネルギーを使う気ね」


グランの顔が青ざめる。


「つまり?」


「都市ごと吹き飛ばす」


沈黙。


リゼが絶句する。


だが。


士郎だけは笑っていた。


「いい」



古代騎士が機械音声を響かせる。


【対魔王最終殲滅砲】


【発射準備完了】


次の瞬間。


光輪の中心へ、超高密度魔力が収束した。


赤黒い光。


空間が歪む。


都市全域が震える。


エレノアですら眉をひそめた。


「これは少し危険ね」


リゼが叫ぶ。


「少し!?」



士郎は前へ出る。


黒い靄。


今までで最大。


身体の奥が熱い。


何かが目覚めようとしている。


壊したい。


殺したい。


全部叩き潰したい。


その衝動が膨れ上がる。


だが。

士郎は笑った。


心地いい。


今までで一番、生きている感じがする。



発射。


轟音。


赤黒い奔流が都市を飲み込む。


世界が白く染まった。


リゼが悲鳴を上げる。


グランも目を覆う。


だが。

エレノアだけは見ていた。


その先を。



爆炎の中心。


黒い影。


士郎。


砲撃を真正面から受けながら、前へ進んでいる。


皮膚が裂ける。


肉が焼ける。


血が飛ぶ。


それでも。


止まらない。


古代騎士の赤眼が激しく揺れる。


【理解不能】


【理解不能】


【理解不能】


士郎は笑った。


「終わりか?」


次の瞬間。


士郎の背後。


巨大な黒い影が完全に現れる。


王冠のような角。


赤黒い瞳。


世界そのものを威圧する存在感。


エレノアが静かに呟く。


「……原初の魔王」


リゼの顔が凍る。


グランは声も出ない。



だが。

士郎本人は気づいていなかった。


ただ。

拳を握る。


黒い靄が拳へ集束する。


空間が軋む。


古代騎士が後退る。


兵器なのに。


本能的に恐怖していた。


そして。


士郎が踏み込む。


轟音。


地面が消し飛ぶ。


拳。


ドゴォォォォォォォォン!!!


世界が揺れた。


古代騎士の胸部が陥没する。


黒鎧が砕ける。


内部の赤い核が露出した。


士郎はさらに踏み込む。


二撃目。


拳。


核を貫通。


静寂。


次の瞬間。


古代騎士が崩壊を始めた。


赤い光が消えていく。


【対魔王機構……停止……】


そして。


神代文明最終防衛機構は、完全に沈黙した。



静寂。


崩壊するアガルタ。


その中心で。


士郎だけが立っていた。


血まみれで。


黒い靄を纏いながら。


エレノアは静かに笑う。


確信していた。


この男は。


いずれ本当に世界を壊す。


だが。


それでも目を離せない。


美しすぎるほど、危険だった。



その時。


アガルタ最奥。


巨大な黒門が、ゆっくり開き始める。


轟音。


古代文字。


溢れ出す禍々しい魔力。


エレノアの表情が変わった。


「……嘘」


リゼが震える。


「な、なに……?」


エレノアは黒門を見つめながら呟く。


「魔王城への門よ」


沈黙。


士郎の口元が、ゆっくり歪む。


「面白い」


古代都市アガルタ。


その最深部で。


“世界の秘密”が、ついに姿を現そうとしていた。

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