第52話 対魔王最終兵装
轟音。
古代都市アガルタ全域へ警報が響き渡る。
【対魔王最終兵装 起動】
赤黒い光が都市中を走る。
崩壊した塔。
黒壁。
地面。
全ての魔力が、古代騎士へ収束していく。
兵士でもないグランですら、本能で理解した。
終わっている。
あれは戦争兵器なんてレベルじゃない。
◇
古代騎士の巨大剣が変形を始める。
黒い装甲が展開。
内部から赤い光が脈動する。
そして。
背後へ巨大な光輪が出現した。
まるで。
機械仕掛けの神。
リゼの顔が青ざめる。
「な、なにあれ……」
エレノアの赤い瞳が細くなる。
「神代文明の本気ね」
士郎は笑った。
心の底から楽しそうに。
「最高だ」
◇
次の瞬間。
古代騎士が消えた。
轟音。
士郎の眼前。
巨大剣が振り下ろされる。
速い。
今までとは別次元。
士郎は拳で迎え撃つ。
激突。
衝撃波。
都市の建物がまとめて吹き飛ぶ。
だが。
止めきれない。
士郎の身体が地面へ叩き込まれる。
大地が陥没。
リゼが悲鳴を上げる。
「士郎!!」
◇
古代騎士は止まらない。
巨大剣を連続で叩き込む。
轟音。
轟音。
轟音。
アガルタそのものが崩れ始める。
エレノアですら眉をひそめた。
「本当に対魔王兵器なのね……」
その時。
地面が爆発した。
士郎。
血まみれ。
全身ボロボロ。
それでも。
笑っている。
兵士なら即死。
だが。
士郎は立っていた。
そして。
黒い靄。
今までで一番濃い。
◇
古代騎士の赤眼が明滅する。
【危険度上昇】
【魔王因子活性化確認】
【殲滅優先度最大】
エレノアが静かに呟く。
「やっぱり反応してる」
古代兵器は間違いなく理解している。
西園寺士郎の中にいるものを。
◇
士郎は拳を握る。
身体が熱い。
壊れそうだ。
だが。
不快じゃない。
むしろ。
今までで一番、生きている感じがした。
士郎は笑う。
「もっと来い」
次の瞬間。
古代騎士が背後の光輪を展開した。
無数の赤い砲門。
エレノアの顔が変わる。
「伏せなさい!!」
発射。
光の雨。
都市全域爆撃。
轟音。
爆炎。
空が白く染まる。
◇
だが。
その中を。
黒い影が突っ切っていた。
士郎。
砲撃を受けながら前進している。
皮膚が裂ける。
血が飛ぶ。
それでも止まらない。
グランが絶叫する。
「なんで前に出るんだよ!?」
士郎は笑う。
「死にそうだからだ」
リゼの顔が凍る。
エレノアは静かに士郎を見る。
やはり。
この男は。
死を恐れていない。
死に近づくことでしか、生を実感できない。
完全に壊れている。
◇
その時。
士郎の背後。
巨大な黒い影が再び揺らめいた。
今度は前よりはっきり。
巨大。
禍々しい。
王冠のような角。
赤い瞳。
エレノアの目が見開かれる。
「……!」
古代騎士の動きが止まる。
赤眼が激しく明滅した。
【原初魔王反応】
【確認】
沈黙。
次の瞬間。
古代騎士が初めて後退った。
恐怖していた。
兵器であるはずなのに。
“原初の魔王”を。
士郎は気づいていない。
ただ、笑っていた。
獰猛に。




