第50話 古代都市アガルタ
山岳地帯の奥。
霧の向こう側。
それは存在していた。
古代都市アガルタ。
巨大だった。
黒い壁。
空へ伸びる塔群。
崩壊しているはずなのに、どこか“生きている”ような異様な気配。
リゼが息を呑む。
「……なにこれ」
グランの顔も険しかった。
「都市ってレベルじゃねぇぞ……」
だが。
エレノアだけは静かだった。
赤い瞳で都市を見つめる。
「神代文明最高傑作」
その声には、ほんの少しだけ熱が混じっていた。
◇
士郎は都市を見上げる。
強い気配。
大量。
しかも。
今まで感じたことがない種類。
その感覚に。
口元が歪む。
「いいな」
エレノアが笑う。
「気に入った?」
「ああ」
リゼが呆れる。
「観光感覚で言わないでよ……」
◇
都市入口。
巨大な黒門。
数百年前に滅んだはずなのに、門には魔力が流れていた。
エレノアが静かに触れる。
魔法陣展開。
轟音。
門がゆっくり開いていく。
その瞬間。
都市内部から濃密な殺気が流れ出した。
グランが反射的に武器を抜く。
「来るぞ!!」
次の瞬間。
黒い影が飛び出した。
人型。
だが。
人間じゃない。
黒い装甲。
赤い単眼。
古代機兵。
神代文明の自動兵器。
◇
古代機兵は士郎たちを見る。
そして。
機械音声が響いた。
【侵入者確認】
【殲滅開始】
次の瞬間。
超高速で突撃してきた。
速い。
兵士級では反応できない。
だが。
士郎は笑った。
拳。
轟音。
古代機兵の頭部が吹き飛ぶ。
そのまま踏み込み、二体目を蹴り砕く。
三体目。
腕を掴み、そのまま引き千切る。
火花。
金属片。
グランが顔を引きつらせる。
「また素手かよ……」
◇
都市内部。
無数の赤い光が点灯した。
古代機兵。
数十。
いや。
百以上。
リゼの顔が青ざめる。
「うそでしょ……」
エレノアは少し楽しそうだった。
「歓迎されてるわね」
兵器群が一斉に動き出す。
空気が震える。
完全包囲。
普通なら終わりだった。
だが。
士郎は笑う。
「いい」
次の瞬間。
黒狼が突っ込んだ。
轟音。
拳。
蹴り。
肘。
人体破壊術。
古代機兵たちが次々粉砕される。
金属の雨。
火花。
破壊。
兵器群が一瞬で崩れていく。
◇
その光景を見ながら。
エレノアは静かに士郎を観察していた。
黒い靄。
戦うほど濃くなる。
そして。
アガルタへ入ってから、明らかに反応が強い。
まるで。
都市そのものが、士郎へ呼応しているみたいだった。
エレノアは小さく呟く。
「やっぱり……」
◇
その時。
都市中央。
巨大塔の上。
赤い光が灯る。
空気が変わる。
今までとは比較にならない重圧。
グランの顔色が変わった。
「なんだあれ……」
エレノアの赤い瞳が細くなる。
「守護者ね」
塔の頂上。
巨大な人影が立っていた。
全身黒鎧。
片手には巨大剣。
古代騎士。
神代文明最終防衛機構。
その瞬間。
士郎の口元が歪む。
獰猛に。
「強いな」
古代騎士の赤い眼が士郎を捉える。
そして。
機械音声が響いた。
【魔王反応確認】
沈黙。
リゼの顔が凍る。
エレノアは笑った。
楽しそうに。
そして。
古代騎士が巨大剣を抜いた。
轟音。
古代都市アガルタ全体が揺れ始める。




