第49話 古代都市への道
数日後。
王都ヴァルディアを、一台の馬車が出発した。
行き先は北東。
神代文明遺跡群。
その最深部に存在すると言われる、“古代都市アガルタ”。
◇
御者台。
グランが手綱を握りながら顔をしかめていた。
「なんで俺まで付き合わされてんだ……」
リゼが苦笑する。
「諦めて」
そして。
馬車後方。
黒いコートの男。
西園寺士郎。
その隣には。
灰の魔女エレノア。
最悪の並びだった。
街道を通る旅人たちは、二人を見た瞬間に
道を空ける。
誰も近づかない。
怖すぎる。
◇
エレノアは地図を見ながら言う。
「アガルタは神代文明最大級の遺跡都市よ」
士郎は興味なさそうだった。
「強い奴はいるのか」
「多分たくさん」
即答。
その瞬間。
士郎の口元が歪む。
リゼがため息を吐いた。
「ほんと戦闘しか興味ないんだから……」
エレノアは笑う。
「でも、それがこの男の本質でしょう?」
士郎は否定しない。
実際その通りだった。
◇
馬車は山岳地帯へ入る。
空気が変わっていく。
静かすぎる。
鳥もいない。
魔物の気配も薄い。
グランが嫌そうな顔をする。
「……嫌な場所だな」
エレノアが静かに言う。
「神代文明跡地は、今でも呪われてるもの」
リゼの顔が引きつる。
「怖いこと言わないでよ……」
その時だった。
士郎の目が細くなる。
「来る」
次の瞬間。
轟音。
馬車の前方で地面が爆発した。
巨大な黒い影。
全長十メートル級。
岩のような外殻。
赤い眼。
古代守護獣。
グランが顔色を変える。
「うおっ!?」
リゼが叫ぶ。
「なにあれ!?」
エレノアは冷静だった。
「神代文明の防衛兵器ね」
守護獣が咆哮する。
衝撃波で木々が吹き飛ぶ。
だが。
士郎は笑った。
「悪くない」
◇
次の瞬間。
士郎が馬車から飛び降りる。
轟音。
地面が陥没する。
守護獣が突進。
巨体。
超重量。
普通なら潰される。
だが。
士郎は真正面から踏み込んだ。
拳。
ドゴォォォォン!!!
守護獣の顔面が歪む。
巨体が止まる。
グランが絶句した。
「止めた!?」
士郎はさらに拳を叩き込む。
連撃。
外殻が砕ける。
守護獣が咆哮。
巨大な腕を振り下ろす。
士郎は避けない。
肘打ちで迎撃。
轟音。
腕が砕け散る。
◇
エレノアは静かにその戦いを見ていた。
やはり異常。
魔力なし。
なのに神代兵器と殴り合っている。
そして。
黒い靄。
また少し濃くなっている。
エレノアは小さく呟く。
「順調ね」
リゼが嫌そうな顔をする。
「何が?」
エレノアは笑った。
「壊れ具合」
「笑顔で言わないで!?」
◇
その時。
守護獣の胸部が開いた。
内部。
赤い光。
超高密度魔力砲。
グランの顔色が変わる。
「まずい!!」
だが。
士郎は笑った。
「いい」
砲撃発射。
轟音。
山そのものが揺れる。
爆炎。
煙。
静寂。
だが。
その中から。
黒い影が歩いてくる。
士郎。
全身傷だらけ。
それでも。
笑っていた。
そして。
守護獣の眼前へ到達する。
拳を握る。
黒い靄が拳へ集まる。
エレノアの赤い瞳が細くなる。
「また使った」
次の瞬間。
士郎が拳を叩き込んだ。
ドゴォォォォォン!!!
守護獣の胸部が貫通する。
赤い核が砕けた。
巨体が崩れ落ちる。
静寂。
グランが乾いた笑いを漏らす。
「……神代兵器まで殴り壊すのかよ」
士郎は血を払う。
そして。
山奥を見る。
そこには。
巨大な黒い都市の影が見えていた。
古代都市アガルタ。
まるで。
世界そのものが眠っているような場所だった。




