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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第48話 灰の同行者

災厄級魔獣討伐から三日。


王都ヴァルディアは、未だ混乱の中にあった。


崩壊した街区。


大量の死傷者。


そして。


“黒狼”と“灰の魔女”。


二つの災厄が同時に現れたことで、人々の恐怖はさらに膨れ上がっていた。



王城。


謁見の間。


王国上層部は重苦しい空気に包まれていた。


机の上には報告書。


【災厄級魔獣討伐】


【王都被害甚大】


【討伐者:西園寺士郎、灰の魔女エレノア】


幹部の一人が頭を抱える。


「なぜ灰の魔女が王都にいる……」


別の男が低く言う。


「問題はそこじゃない」


沈黙。


全員分かっていた。


問題は黒狼。


士郎の危険性は、もはや国家管理レベルを超えている。


だが。

止められる人間がいない。



その頃。


士郎は王都の宿屋で肉を食っていた。


大量。


山盛り。


リゼが呆れた顔をする。


「ほんとよく食べるよね……」


「腹が減る」


最近特に酷い。


戦うたび。


黒い力が漏れるたび。


身体が飢える。


その時。


宿屋の扉が開いた。


銀髪。


赤い瞳。


灰のローブ。


エレノア。


周囲の客が一斉に固まる。


空気が凍った。


エレノアは気にせず士郎の前へ座る。


「来たわよ」


リゼが嫌そうな顔をする。


「なんで普通に来るの……」


「面白い男がいるから」


即答。


士郎は肉を食いながら聞く。


「なんの用だ」


エレノアは笑った。


「あなたについていく」


沈黙。


リゼが吹き出す。


「は?」



士郎は興味なさそうだった。


「勝手にしろ」


「軽っ!?」


リゼが叫ぶ。


だが。

エレノアは満足そうだった。


「やっぱり好きよ、その反応」


普通なら拒絶する。


警戒する。


だがこの男は違う。


本当に、自分へ興味がない。


それが逆に面白かった。



エレノアは士郎を見つめる。


赤い瞳。


獲物を見るような視線。


「あなた、自分の中のものを知らなすぎる」


士郎は肉を食いながら答える。


「興味ない」


「私はあるの」


即答だった。


リゼが完全に引いている。


エレノアは静かに続ける。


「“魔王因子”はただの力じゃない」


宿屋の空気が重くなる。


周囲の客たちも息を呑んでいた。


エレノアは指を組む。


「昔、この世界には“原初の魔王”がいた」


「……」


「世界を半壊させた怪物よ」


リゼの顔が青ざめる。


だが。

士郎は平然としていた。


エレノアは笑う。


「その力が、あなたの中にある」


沈黙。


士郎は少し考える。


そして。


「強いのか?」


リゼが頭を抱えた。


「そこ!?」


エレノアは本気で笑った。


「ええ。多分、この世界で一番」


その瞬間。


士郎の口元が僅かに歪む。



宿屋の外。


王都の人々は遠巻きに見ていた。


黒狼。


灰の魔女。


並んで座っているだけで怖い。


誰かが呟く。


「終わった……」


「王都に災厄が二人いる……」


完全に扱いが怪談だった。



夜。


宿屋屋上。


士郎は一人で夜空を見ていた。


そこへエレノアが来る。


「また眠れない?」


「ああ」


エレノアは隣へ立つ。


しばらく沈黙。


やがて。


エレノアが静かに言った。


「古代都市へ行きましょう」


士郎の目が細くなる。


「なんだそれは」


「神代文明の遺跡」


エレノアは笑う。


「あなたの中の“魔王因子”について知りたいなら、丁度いい場所よ」


そして。


赤い瞳が細くなる。


「きっと、退屈しないわ」


その言葉に。


士郎は少し笑った。


強い敵。

未知。

死に近い場所。


悪くない。


風が吹く。


王都の夜景を見下ろしながら。


黒狼と灰の魔女は、静かに次の地獄を見据えていた。

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