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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第47話 壊れた男

災厄級魔獣、消滅。


王都中央広場には静寂が落ちていた。


崩壊した街。


黒い灰。


焼け焦げた大地。


兵士たちは呆然と立ち尽くしている。


勝った。


確かに勝った。


だが。


誰も歓声を上げられなかった。



その中心。


西園寺士郎が立っている。


全身血まみれ。


黒いコートは焼け落ち、肌も裂けていた。


普通なら即死。


だが、士郎はまだ立っている。


そして。


笑っていた。


ほんの少し。


満足そうに。


兵士たちの背筋が寒くなる。


災厄級を倒した直後に。


なんでそんな顔ができる。



リゼが駆け寄る。


「士郎!!」


士郎は振り向く。


「なんだ」


「なんだじゃないよ!!」


リゼの目には涙が浮かんでいた。


脇腹は貫かれ。


身体は焼け焦げ。


それなのに。


平然としている。


リゼは震える声で言う。


「死ぬかと思った……」


士郎は少し黙る。


そして。


「死ななかった」


リゼは唇を噛む。


この男は、本当に壊れている。



その時。

エレノアが近づいてきた。


赤い瞳が士郎を見る。


正確には。


士郎の中を見ていた。


黒い靄。


まだ消えていない。


エレノアは静かに言う。


「今、自分で何をしたか分かる?」


士郎は眉をひそめる。


「殴った」


「そうね。でも、“ただ殴った”だけじゃない」


エレノアの声は真剣だった。


珍しく、ふざけていない。


「あなた、魔力を使ったわ」


沈黙。


リゼが目を見開く。


「え……?」


士郎は即答した。


「俺に魔力はない」


それは事実だった。


今まで何度測っても。


西園寺士郎には魔力反応が存在しない。


だが。


エレノアは首を振る。


「普通の魔力じゃない」


赤い瞳が細くなる。


「もっと古いものよ」



兵士たちは遠巻きに三人を見ていた。


近づけない。


怖い。


特に。


今の士郎は危険だった。


身体から漏れる黒い気配。


まるで。

別の何かが中にいるみたいだった。


兵士の一人が震える声で呟く。


「本当に……人間なのか?」


その言葉を。


誰も否定できなかった。



エレノアは崩壊した広場を見る。


黒い灰。


消滅した災厄級魔獣。


そして。

砕けた黒核。


彼女は静かに呟く。


「古代文明が封印していた理由、分かったわ」


士郎が聞く。


「なんだ」


「“魔王殺し”だからよ」


沈黙。


エレノアは士郎を見る。


「さっきの魔獣、あなたを見た瞬間に反応した」


リゼの顔が曇る。


エレノアは続ける。


「あれは“魔王”を殺すための兵器」


そして。


静かに言った。


「つまり、この世界は昔から、“魔王の復活”を想定していた」


空気が重くなる。


だが。

士郎は興味なさそうだった。


「どうでもいい」


即答。


エレノアが笑う。


「でしょうね」


本当にこの男は変わらない。


世界が滅びる話をしても。


本人は強敵にしか興味がない。



その夜。


王都。


兵士たちは酒場で震えながら語っていた。


「見たか……?」


「災厄級を殴り殺した……」


「灰の魔女と並んで戦ってたぞ……」


「終わってる……」


そして。

必ず最後に出る言葉。


“黒狼”。


その名はもう。


英雄譚じゃなかった。


怪談だった。



深夜。


士郎は一人で王都外壁に立っていた。


風が吹く。


静かな夜。


だが。

身体の奥がざわつく。


今日の戦い。


あの瞬間。


確かに何かが溢れた。


黒い力。


熱。


破壊衝動。


士郎は拳を握る。


その時。


後ろから声。


「眠れない?」


エレノアだった。


銀髪が夜風に揺れる。


士郎は振り返らない。


「ああ」


エレノアは隣へ立つ。


そして。

静かに言った。


「あなた、いずれ世界を壊すわ」


沈黙。


普通なら笑えない言葉。


だが。

士郎は少しだけ笑った。


「だからどうした」


エレノアも笑う。


妖艶に。


そして確信する。


この男は本当に。


“魔王”になる。

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