第二部 第227話 最適
静寂が落ちていた。
崩れた石床。
砕けた空間。
終わらない戦い。
壊れる。
戻る。
死ぬ。
戻る。
何も終わらない。
なのに。
誰ももう、それを気にしていなかった。
轟音。
士郎の拳。
最初の観測者の身体が砕ける。
翔の蹴り。
空間ごと沈む。
死ぬ。
壊れる。
そして。
戻る。
最初の観測者は笑っていた。
本当に少しだけ。
けれど。
前より自然に。
士郎が肩を鳴らす。
少し笑っていた。
「……しぶてぇな」
短く。
「本当に終わらねぇ」
翔が煙を吐く。
静かな目。
「お互い様だろ」
少し間。
「気持ち悪ぃ」
最初の観測者が少し止まる。
そして。
ほんの少しだけ。
笑った。
「そうかもしれません」
静かな声。
「ですが」
少し間。
「悪くありません」
沈黙。
長い沈黙。
終われない怪物達。
殺せない怪物達。
静かな空間。
士郎が少し笑った。
目が細い。
最初の観測者を見る。
少し間。
「お前」
短く。
「喧嘩相手に最適だな」
静寂。
最初の観測者が止まる。
少しだけ。
ほんの少しだけ。
目が揺れる。
翔が煙を吐いた。
静かな声。
「いや」
少し間。
「いつか殺すけどな」
沈黙。
長い沈黙。
最初の観測者が止まる。
初めてだった。
驚きでもない。
困惑でもない。
もっと静かな何か。
本当に長い時間。
二人を見る。
理解できない。
観測できない。
壊れない。
終われない。
気持ち悪い。
なのに。
ほんの少しだけ。
口元が緩む。
「……そうですか」
小さい声。
遠いものを見る目。
そして。
本当に小さく。
けれど確かに。
「目覚めてから今まで」
少し間。
「こんなに楽しかった事はありません」
静寂。
誰も喋らなかった。
笑うものも。
セレナも。
ただ。
終われない怪物達だけが。
少しだけ笑っていた。




