第二部 第226話 選択
静寂が落ちていた。
崩れた石床。
砕けた空間。
誰も動かない。
終われない怪物。
壊れない怪物。
そして。
壊れながら笑う怪物達。
最初の観測者が、ほんの少しだけ笑っていた。
前より自然に。
少しだけ。
本当に少しだけ。
「……楽しい」
小さい声。
言葉を確かめるようだった。
「忘れるかもしれません」
少し間。
「ですが」
静かな声。
「今は」
ほんの少しだけ。
口元が緩む。
「楽しいです」
士郎が鼻を鳴らす。
少し笑っていた。
「そうか」
短く。
「なら良かったな」
翔が煙を吐く。
静かな目。
少し間。
「で」
短く。
「どうすんだ」
最初の観測者が少し止まる。
「どう?」
翔は静かなままだった。
「終われねぇ」
少し間。
「殺せねぇ」
煙が揺れる。
「管理にも興味ねぇ」
静かな声。
「なら」
少し間。
「お前、何すんだ」
長い沈黙。
本当に長い時間。
最初の観測者は考えるようだった。
士郎を見る。
翔を見る。
崩れた空間を見る。
遠い時間を見る目。
そして。
小さい声。
「……分かりません」
少し間。
「ですが」
長い沈黙。
ほんの少しだけ。
迷うみたいな沈黙。
「また」
小さい声。
「会いたい」
静寂。
最初の観測者自身が。
少し止まった。
まるで。
今言った言葉を、自分で理解できないみたいに。
「……違います」
小さい声。
少し間。
「違わないかもしれません」
困ったみたいに。
ほんの少しだけ笑う。
「分かりません」
士郎が少し笑った。
目が細い。
「なら」
短く。
「また殴ればいい」
翔が煙を吐く。
静かな目。
「忘れても」
少し間。
「またやりゃいい」
沈黙。
最初の観測者は静かだった。
本当に長い沈黙。
そして。
ほんの少しだけ。
笑った。
前より自然に。
「……そうですね」
小さい声。
「そうします」
静かな空間。
誰も急がなかった。
終わり方を知らない怪物達が。
初めて。
少しだけ。
続きを選ぼうとしていた。




