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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第45話 第二形態

王都が震えていた。


災厄級魔獣。


第二形態。


黒い外殻が砕け、その内側から異形の肉体が露出する。


巨大。

醜悪。

無数の腕。

脈動する黒い肉。


そして。


空を覆うほどの濃密な魔力。


兵士たちは完全に戦意を失っていた。


「む、無理だ……」


「勝てるわけが……」


絶望。


本能で理解してしまう。


あれは人間が相手にしていい存在じゃない。



だが

士郎だけは笑っていた。


「いいな」


その目には恐怖がない。


あるのは歓喜だけ。


災厄級魔獣も士郎を見ていた。


赤い無数の瞳。


敵意。


憎悪。


そして。


本能的な殺意。


“殺すべき存在”として認識している。


エレノアはその様子を見て確信していた。


やはり、この男は。



次の瞬間。


災厄級魔獣が動いた。


速い。


巨体とは思えない速度。


黒い巨腕が士郎へ迫る。


轟音。


士郎は拳で迎え撃つ。


激突。


衝撃波で周囲の建物が吹き飛ぶ。


だが。


今度は止まらなかった。


士郎の身体が地面を滑る。


兵士たちが絶句する。


「黒狼が……押された……!?」


士郎は血を拭う。


そして。


笑った。


「最高だ」


完全に狂人だった。



魔獣が追撃する。


無数の腕。


超高速連撃。


王都の地面が抉れていく。


士郎は回避。


紙一重。


そして踏み込む。


拳。


ドゴォォォン!!


だが。


再生。


砕けた肉体が瞬時に戻る。


士郎の目が細くなる。


「再生か」


エレノアが後方から言う。


「核を潰さない限り無限再生するわ」


「どこだ」


「知らない」


「役に立たんな」


「ひどい」


この状況で軽口を叩いていた。


兵士たちはもう感覚が麻痺している。



その時。


魔獣の口が開いた。


黒い光。


超高密度魔力。


エレノアの顔が変わる。


「伏せなさい!!」


次の瞬間。


黒い奔流が放たれた。


王都中央通りが消し飛ぶ。


轟音。


爆炎。


兵士たちが吹き飛ばされる。


リゼが絶叫する。


「士郎!!」


煙。


静寂。


だが。


その中から、黒い影が歩いてくる。


士郎。


全身血まみれ。


皮膚は焼け、腕も裂けている。


それでも。


倒れていない。


そして。


笑っていた。


「……いい」


兵士たちの顔が引きつる。


完全に異常。


普通なら即死。


なのに。


この男は嬉しそうだった。



エレノアはそんな士郎を見つめる。


黒い靄。


さらに濃くなっている。


まるで、何かが目覚め始めているみたいに。


エレノアは静かに呟く。


「まだ早いわよ……」


士郎が聞く。


「なんだ」


「あなた、今ここで壊れたら困るの」


その言葉に。


士郎は少し笑った。


「死ぬ気はない」


「でも死にたがってる」


沈黙。


リゼの顔が曇る。


図星だった。


士郎は戦場でしか、生を感じられない。


だから。


死に近づくほど笑う。


エレノアは静かに言った。


「本当に危険ね、あなた」



その時。


災厄級魔獣の胸部が開く。


内部。


脈動する巨大な黒い核。


エレノアの目が細くなる。


「あれね」


士郎も見る。


核。


魔獣が咆哮する。


守るように無数の腕が展開される。


だが、士郎は笑った。


「分かりやすい」


次の瞬間。


地面を蹴る。


轟音。


黒狼が、真正面から災厄級魔獣へ突撃した。

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