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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第三章 『魔女と死神編』

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第44話 魔王因子

王都中央。


災厄級魔獣の咆哮が空を震わせる。


黒い魔力が噴き出し、周囲の建物が崩壊していく。


兵士たちは後退るしかなかった。


「まだ強くなるのか……!」


「化け物すぎる……!」


だが。


その魔獣を前にして。


士郎は笑っていた。



黒い靄。


士郎の身体から漏れ出す異様な気配。


今までより濃い。


空気が重い。


周囲の兵士たちが震え始める。


本能が拒絶していた。


目の前の男は危険だと。


エレノアは静かに士郎を見る。


赤い瞳。


その奥に、確信が宿っていた。


「間違いないわね」


リゼが振り向く。


「……何が?」


エレノアは静かに言った。


「その男、“原初の魔王”の因子を持ってる」


沈黙。


兵士たちの顔色が変わる。


魔王。


その単語だけで空気が凍る。


リゼが声を震わせる。


「そ、そんなの……」


士郎は興味なさそうだった。


「だからなんだ」


エレノアは笑う。


「普通はもっと驚くのだけれど」


「強ければなんでもいい」


即答。


リゼが頭を抱えた。


エレノアは本気で楽しそうだった。


「本当にあなた、壊れてるわね」



その時。


災厄級魔獣が動いた。


轟音。


黒い魔力砲撃。


王都中央通りが消し飛ぶ。


兵士たちが絶叫する。


だが。


士郎は真正面から突っ込んだ。


爆発。

炎。

煙。


その中から、黒いコートが飛び出す。


兵士たちが目を見開く。


無傷ではない。


全身血まみれ。


だが、止まっていない。


士郎は笑っていた。



「いい」


魔獣の巨腕が振り下ろされる。


士郎は避けない。


真正面から拳を叩き込む。


轟音。


巨腕が砕け散る。


そのまま踏み込む。


肘打ち。

膝蹴り。

連撃。


災厄級魔獣の巨体が揺れる。



エレノアはそんな士郎を見つめていた。


異常。


普通の人間なら、とっくに壊れている。


だが。


この男は違う。


傷つくほど。


死に近づくほど。


生き生きしていく。


エレノアは小さく呟く。


「本当に、“器”なのね」



魔獣が咆哮する。


すると。


王都地下からさらに魔力が溢れた。


エレノアの顔が少し変わる。


「……なるほど」


士郎が聞く。


「なんだ」


「この魔獣、“封印”よ」


兵士たちが凍りつく。


封印。


エレノアは静かに続ける。


「古代文明が、地下へ閉じ込めていた」


そして。


赤い瞳が細くなる。


「多分、“魔王”を殺すために」


沈黙。


士郎の黒い瞳が細くなる。


その時。


災厄級魔獣が士郎を見た。


敵意。


憎悪。


まるで。


“本来殺すべき存在”を見つけたみたいに。


エレノアは確信する。


この魔獣。


士郎へ反応している。


つまり。


西園寺士郎の中には、本当に――。



次の瞬間。


災厄級魔獣の全身が変異を始めた。


外殻が割れる。


黒い肉が膨張する。


兵士たちが絶叫する。


「ま、まだ変化するのか!?」


エレノアの目が細くなる。


「第二形態……」


士郎は笑った。


心の底から嬉しそうに。


「最高だ」


その瞬間。


士郎の背後で。


巨大な黒い影が、一瞬だけ揺らめいた。

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