第43話 魔女たる所以
王都は地獄になっていた。
地面を突き破って現れる大量の魔獣。
悲鳴。
炎。
崩壊。
兵士たちは必死に戦っている。
だが。
止めきれない。
数が多すぎる。
◇
その中心。
黒狼――西園寺士郎。
灰の魔女――エレノア。
二人だけが異常だった。
士郎は魔獣の群れへ突っ込む。
拳。
蹴り。
肘打ち。
人体破壊術。
魔獣たちが次々吹き飛ぶ。
巨大な魔獣の頭部を掴み、そのまま地面へ叩きつける。
轟音。
周囲の兵士たちが完全に固まっていた。
「なんだよあれ……」
「人間じゃねぇ……」
だが。
隣の魔女はもっと異常だった。
◇
エレノアが空を見上げる。
銀髪が揺れる。
赤い瞳が細くなる。
その瞬間。
王都上空へ、巨大な灰色魔法陣が展開された。
今までとは比較にならない規模。
空そのものが魔法陣で埋まる。
兵士たちが絶句する。
「う、嘘だろ……」
「王都全域を覆ってる……!」
エレノアは静かに呟いた。
「跪きなさい」
瞬間。
空間そのものが重くなる。
魔獣たちの巨体が地面へ叩きつけられた。
重力操作。
しかも超広域。
魔獣たちは動けない。
骨が軋み、肉が潰れる。
それでも耐えようとする。
だが。
エレノアは退屈そうだった。
「しつこいわね」
指を振る。
次の瞬間。
重力がさらに増した。
轟音。
大量の魔獣がまとめて圧殺される。
血の雨。
静寂。
兵士たちはもう声も出なかった。
国家魔術師レベルじゃない。
災害そのもの。
◇
士郎はそんなエレノアを見ていた。
強い。
純粋にそう思う。
ゼクトとは違う。
戦士じゃない。
もっと異質。
世界の法則そのものを捻じ曲げている。
その感覚に。
士郎は少し笑った。
エレノアが気づく。
「なに?」
「お前、いいな」
リゼが頭を抱える。
「この状況で口説かないで!!」
エレノアは楽しそうに笑った。
「嬉しいわ」
本気だった。
この男は。
自分を恐れない。
それが面白い。
◇
その時。
災厄級魔獣が咆哮する。
まだ生きていた。
全身ボロボロ。
だが
異常な再生力で傷を塞いでいく。
エレノアの目が細くなる。
「古代型か」
士郎が聞く。
「強いのか」
「昔、神代戦争で使われた生物兵器よ」
兵士たちの顔色が変わる。
神代戦争。
伝説の時代。
そんな存在が、なぜ今。
エレノアは魔獣を見る。
「普通なら、とっくに滅んでるはずだけど」
その時。
災厄級魔獣の赤眼が士郎を捉えた。
空気が変わる。
本能。
恐怖。
そして。
敵意。
魔獣は理解していた。
一番危険なのは。
黒狼だと。
次の瞬間。
魔獣の全身から黒い魔力が噴き出した。
王都が揺れる。
兵士たちが絶望する。
「ま、まだ力を残してたのかよ……!」
だが
士郎は笑った。
獰猛に。
「来い」
その瞬間。
士郎の身体から漏れる黒い靄が、さらに濃くなる。
エレノアの目が細くなる。
確信していた。
この男の中に眠るもの。
それは。
ただの力じゃない。
“魔王”そのものだと。




