第二部 第221話 終われない
翔が煙を吐いた。
少し間。
静かな目。
「で」
短く。
「切れねぇのか」
最初の観測者が少し止まる。
「切る?」
翔は静かなままだった。
「その気持ち悪ぃの」
少し間。
「壊れねぇやつ」
長い沈黙。
最初の観測者は自分を見る。
小さい声。
「……分かりません」
静かな声。
「目覚めた時から」
少し間。
「そうでした」
士郎が少し眉を動かす。
「生まれつきか」
最初の観測者は少し考える。
そして。
小さい声。
「恐らく」
少し間。
「止まりません」
「切れません」
静かな空間。
翔が煙を吐く。
「面倒だな」
短く。
「老けねぇのか」
最初の観測者は静かだった。
ほんの少しだけ。
首を傾げる。
「老います」
沈黙。
笑うものが止まる。
『え?』
最初の観測者は続けた。
小さい声。
「壊れます」
「死にます」
静かな声。
「ですが」
少し間。
「終わりません」
沈黙。
誰もすぐには言葉を返さなかった。
長い沈黙。
セレナが初めて少し目を細める。
小さい声。
「……結果否定」
少し間。
「経年劣化すら」
最初の観測者は静かに頷いた。
「終わった事がありません」
遠くを見る目。
本当に長い時間。
長すぎる時間。
「死んだ事も」
少し間。
「老いた事も」
小さい声。
「ありません」
笑うものの顔から少し色が消える。
『……いや待て』
小さい声。
『それ』
少し間。
『地獄じゃん』
沈黙。
最初の観測者は少し考えるようだった。
ほんの少しだけ。
口元が緩む。
「……そうかもしれません」
士郎が鼻を鳴らす。
面倒そうだった。
「なら」
短く。
「余計に喧嘩相手いねぇな」
翔が煙を吐く。
静かな目。
少し間。
「終われねぇのは」
短く。
「気分よくねぇだろ」
最初の観測者は初めて少し止まった。
翔を見る。
小さい声。
「……気分」
少し間。
「よくない」
長い沈黙。
本当に少しだけ。
考えるみたいに目が揺れる。
「……そうかもしれません」
少し間。
そして。
ほんの少しだけ。
困ったみたいに笑った。
「初めて言われました」
静寂が落ちた。
けれど。
どこか少しだけ。
今までより静かではなかった。




