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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』第七章 『怪物達編』

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第二部 第218話 楽しい


石床が砕けた。


轟音。


士郎の拳が最初の観測者へ叩き込まれる。


頭蓋が潰れる。


首が折れる。


身体が砕ける。


だが。


次の瞬間。


元通りだった。


士郎は笑う。


最初の観測者も。


ほんの少しだけ。


笑っていた。


沈黙。


翔が煙を吐く。


静かな目。


「……慣れたな」


士郎が鼻を鳴らす。


「お前もだろ」


短く。


「死ぬの」


翔は煙を吐く。


少し間。


「気持ち悪りぃのは変わらねぇ」


静かな声。


「でも」


少し間。


「前ほどじゃねぇな」


最初の観測者が二人を見る。


小さい声。


「適応したのですか」


士郎が肩を回す。


「知らねぇ」


短く。


「殴ってたら慣れた」


長い沈黙。


最初の観測者が少し目を細める。


「……やはり」


少し間。


「理解できません」


セレナが小さく息を吐いた。


静かな声。


「理解しなくていいと思います」


最初の観測者が少し目を向ける。


セレナは静かだった。


「二人とも」


少し間。


「そういう生き物です」


士郎が笑う。


「酷ぇ言われようだな」


翔が煙を吐く。


「否定は出来ねぇな」


最初の観測者が止まる。


そして。


少し間。


小さい声。


「生き物」


静かな声。


「そうかもしれません」


沈黙。


長い沈黙。


本当に長い時間。


最初の観測者は遠くを見た。


世界を見てきた目。


無数の誕生。


無数の終わり。


無数の絶望。


全て見てきた。


だが。


今は違う。


初めてだった。


理解できない。


観測できない。


予測もできない。


なのに。


退屈ではない。


小さい声。


「……不思議です」


士郎が少し首を鳴らす。


「何がだ」


最初の観測者は静かに答えた。


「今までは」


少し間。


「全て知っていました」


静かな声。


「全て観ていました」


「全て予測できました」


長い沈黙。


そして。


ほんの少しだけ。


笑う。


「ですが」


少し間。


「今は分からない」


士郎が笑った。


目が細い。


「そりゃ良かったな」


短く。


「退屈しねぇだろ」


最初の観測者は静かだった。


そして。


初めて。


少しだけ。


本当に少しだけ。


楽しそうだった。


「ええ」


小さい声。


「楽しいです」


静寂が落ちる。


誰も喋らない。


長い沈黙。


そして。


笑うものが、小さく呟いた。


『……言ったな』


少し間。


『初めて』


セレナが静かに目を細める。


最初の観測者は何も言わない。


ただ。


ほんの少しだけ笑っていた。


目覚めてから今まで。


一度も無かった顔で。

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