第二部 第214話 観測外
空間が軋んだ。
音ではない。
圧でもない。
何か。
もっと根本的なもの。
見えない何かが、ずれた。
笑うものが固まる。
『……え?』
短い沈黙。
『何した今!?』
最初の観測者は静かだった。
動いていない。
構えてもいない。
ただ。
見ている。
士郎を。
翔を。
少し間。
小さい声。
「見ています」
静かな声。
「壊れない理由を」
次の瞬間。
士郎の身体が止まった。
ほんの一瞬。
動きが鈍る。
違和感。
痛みではない。
死でもない。
もっと嫌な感覚。
視界が重い。
思考が遅い。
身体が、自分のものじゃないみたいだった。
士郎の眉が少し動く。
「……あ?」
翔の煙が止まる。
初めてだった。
少しだけ目が細くなる。
「何した」
最初の観測者は静かだった。
小さい声。
「観ています」
少し間。
「壊れないものを」
翔の足が止まる。
ほんの一瞬。
呼吸。
重い。
思考。
鈍い。
身体が拒絶する。
まるで。
“自分が自分を壊そうとしている”
みたいな感覚。
セレナが目を細めた。
静かな声。
「……違う」
少し間。
「攻撃じゃない」
最初の観測者を見る。
「観測してる」
笑うものが振り向く。
『観測?』
セレナは小さく頷いた。
静かな瞳。
「理解しようとしてる」
少し間。
「二人を」
最初の観測者は静かだった。
長い沈黙。
小さい声。
「何故」
少し間。
「壊れないのですか」
士郎が肩を鳴らす。
鈍さを無理やり押し退ける。
口元が少し歪んだ。
「知らねぇよ」
短く。
「気合いだろ」
笑うものが止まる。
『雑!!』
翔が煙を吐く。
少し間。
「見んなよ」
静かな目。
「気持ち悪りぃ」
最初の観測者が初めて少し止まる。
ほんの少しだけ。
目が細くなる。
「……嫌ですか」
士郎が少し笑った。
目が細い。
「嫌だな」
短く。
拳を握る。
「だから殴る」
次の瞬間。
石床が砕けた。




