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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』第七章 『怪物達編』
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第二部 第207話 怪物達


轟音が遅れて響いた。


士郎の姿が消える。


次の瞬間には。


拳が届いていた。


真正面。


躊躇も無い。


加減も無い。


ただ壊すためだけの一撃。


空間が歪む。


石床が割れる。


衝撃が走る。


普通なら。


終わる。


だが。


違和感。


拳は確かに当たった。


感触もあった。


骨も。


肉も。


存在も。


確かに捉えた。


なのに。


少し遅れて。


そこから居なくなる。


士郎の拳が空を裂いた。


轟音。


後方の石床が崩れる。


笑うものが目を剥く。


『は!?』


少し間。


『今絶対当たってただろ!?』


『当たったよな!?』


士郎が振り向く。


少し笑っていた。


目が細い。


「いいな」


短く。


「久々だ」


最初の観測者は数歩後ろ。


歩いていない。


避けてもいない。


動いた様子すら無い。


ただ。


そこに居る。


静かな目だけが士郎を見る。


小さい声。


「重いですね」


少し間。


「痛かった」


笑うものが止まる。


『痛いんかい!!』


『じゃあ効いてるじゃねぇか!!』


最初の観測者は少し考える。


答えを探すように。


小さい声。


「効いています」


少し間。


「でも」


静かな声。


「終わりません」


翔が煙を吐いた。


目は細い。


静かな声。


「ズレてるな」


少し間。


「居る場所じゃねぇ」


最初の観測者は少し考える。


否定もしない。


肯定もしない。


ただ。


小さい声。


「近いです」


静かな声。


「私は少し」


ほんの少しだけ。


自分を見る。


「生命にも」


「非生命にも」


少し間。


「近くありません」


意味は分からない。


だが。


本人にとっては説明になっていた。


士郎の姿が消える。


二撃目。


今度は蹴り。


空間ごと叩き割るような暴力。


石床が砕ける。


空気が裂ける。


轟音。


最初の観測者の身体が揺れる。


遅れて。


崩れる。


肩が砕ける。


身体が裂ける。


存在そのものが歪む。


だが。


次の瞬間。


少し横。


そこに立っていた。


壊れていたはずの身体も。


傷も。


何も無い。


最初からそうだったみたいに。


静かに立っている。


翔の煙が止まる。


初めてだった。


少しだけ目が細くなる。


沈黙。


それから。


静かな声。


「……殺せねぇな」


右足が沈む。


一瞬。


距離が消えた。


拳。


肘。


蹴り。


霧流拳。


一撃必殺ではない。


殺すための積み重ね。


最短。


最小。


だが。


確実に殺す技。


連撃。


急所。


関節。


首。


頭。


沈むような連続攻撃。


普通なら死ぬ。


絶対に死ぬ。


だが。


浅い。


当たっている。


確かに壊している。


なのに。


結果が遅れる。


死が届かない。


最初の観測者が。


初めて少し目を細めた。


小さい声。


「……速いですね」


翔が距離を取る。


煙を吐く。


少し間。


「気持ち悪ぃ」


静かな声。


「死ぬ感覚が無ぇ」


それが全てだった。


生きているなら死ぬ。


死なないなら別の理屈がある。


だが。


この存在はそのどちらにも近くない。


セレナが小さく目を細めていた。


静かな声。


「……壊れてない」


少し間。


「でも」


ほんの少しだけ目を伏せる。


「壊れない訳でもない」


確かに崩れている。


確かに効いている。


だが。


終わらない。


その事実だけが異常だった。


士郎が笑う。


口元だけ。


退屈そうだった目が。


久しぶりに細かった。


「なるほど」


短く。


「退屈しねぇな」


最初の観測者は静かに二人を見ていた。


長い時間。


初めて。


理解できないものを見る目で。

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