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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』第六章『世界管理崩壊編』 
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第二部 第197話 余波


世界管理領域は、どこまでも静かだった。


あれほど耳障りだった管理音声も。


押し付けるような監視も。


今は何一つ存在しない。


白い空間には無数の結晶世界だけが漂っている。


生まれかけた世界。


壊れかけた世界。


終わりを迎えた世界。


始まりを待つ世界。


それぞれが誰にも触れられず。


ただ在るだけだった。


『……変な感じだな』


笑うものがぽつりと呟く。


落ち着かなそうに周囲を見回し。


小さく肩をすくめた。


『急に自由って言われてもさ』


乾いた笑いが漏れる。


『正直、実感湧かないんだけど』


本音だった。


ずっと追われてきた。


ずっと監視されてきた。


自由を求めて逃げ続けてきた。


なのに。


本当に自由になった瞬間。


何をしていいのか分からなくなっていた。


士郎は興味なさそうに近くの結晶世界へ目を向けていた。


戦争をしている世界。


静かな海を抱えた世界。


滅びかけた文明。


どれももう。


誰にも修正されない。


鼻を鳴らす。


「勝手に生きりゃいいだろ」


少し間を置く。


つまらなそうに続けた。


「邪魔する奴も居なくなった」


笑うものは少し黙った。


『……まぁ、それはそうなんだけど』


言い返せない。


自由なんて。


結局それだけなのだろう。


セレナは静かに結晶群を見ていた。


いつもの無表情に近い顔。


けれど。


ほんの少しだけ不思議そうだった。


「変ですね」


小さく呟く。


「ずっと管理されていた場所なのに」


白い空間を見渡す。


静かな声。


「静かな方が、自然に見えます」


管理があることが当たり前だった。


観測があることが当たり前だった。


介入があることが当たり前だった。


それなのに今は。


何もない方が自然に感じる。


その事実が少し不思議だった。


翔が煙を吐いた。


白い空間をぼんやり眺める。


静かな声。


「そもそも」


少し間。


「なんで追われてたんだ……?」


笑うものが止まった。


『……は?』


拍子抜けした顔をする。


だが。


数秒後。


小さく笑った。


『簡単だよ』


白い空間を見る。


『管理が嫌いだった』


肩をすくめる。


『決められた通り動け』


『勝手に動くな』


『命令聞け』


乾いた笑いが漏れる。


『だから嫌になって逃げた』


結晶世界を見上げる。


『勝手に動いて』


『勝手に生きて』


『勝手に笑ってたら』


少し間。


肩をすくめた。


『危険判定』


『まぁ、当然だよな』


どこか自嘲気味だった。


だが後悔はしていない。


逃げたから今ここにいる。


翔は煙を吐く。


少しだけ目を細めた。


「で、自由になりたくて」


少し間。


「俺らについてきて」


静かな声で続ける。


「何の参考にもならなかったと……」


数秒。


笑うものが固まる。


それから盛大に顔をしかめた。


『いや自由すぎない!?』


少し間。


頭を抱える。


『規格外すぎて何の参考にもならなかったよ!』


『普通もっと段階とかあるだろ!?』


『自由にも限度があるだろ!?』


士郎が鼻を鳴らす。


「だからどうした」


少し間。


「好きに生きりゃいいだろ」


本気で理解していなかった。


翔も同じだった。


煙を吐きながら。


興味なさそうに白い空間を見る。


「真似しなきゃいい」


笑うものが止まる。


数秒。


それから乾いた笑いを漏らした。


『……本当に参考にならない』


だが。


少しだけ。


肩の力は抜けていた。


白い空間には。


無数の世界が漂っている。


誰にも管理されない世界。


誰にも決められない世界。


そして。


ようやく自由になった一人の観測外者の笑い声だけが。


静かに響いていた。

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