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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』第六章『世界管理崩壊編』 
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第二部 第187話 本物


白い道の奥で。


何かが目を開いた。


その瞬間だった。


空間が静かに沈黙する。


違う。


外界そのものが。


息を止めた。


今までとは圧が違う。


中心防衛個体。


執行者。


観測外者。


その全てが霞む。


比べること自体が間違っている。


存在の格。


そのものが違った。


頭の奥へ。


初めて。


畏怖が流れ込む。


『最高権限接続』


『観測者代行起動』


『怪物群排除開始』


声と同時に。


白い空間が裂けた。


現れる。


一体。


人型。


だが形が安定しない。


見る度に輪郭が変わる。


法則が変わる。


認識が変わる。


存在の定義そのものが変化していた。


ただ立っているだけで。


周囲の世界が修正される。


壊れた法則が戻る。


歪んだ距離が整う。


乱れた観測が安定する。


侵食された白が。


静かに修復されていく。


まるで世界そのものが、その存在を基準に再構築されているようだった。


笑うものが止まる。


『……何あれ』


少し間。


本気で顔が引き攣る。


『中心防衛より上なんだけど』


セレナの声が初めて硬かった。


「観測者代行」


小さい声。


「最高位代理個体です」


静かな瞳が揺れる。


「外界権限の一部を保有しています」


少し間。


「中心防衛個体とは比較になりません」


その瞬間だった。


観測者代行が視線を向ける。


世界が変わる。


士郎と翔。


その存在そのものが。


“居なかったこと”になる。


立つ。


歩く。


生きる。


呼吸する。


存在する。


全て。


削除。


世界から除外される。


笑うものが叫ぶ。


『え!?』


空間が消える。


因果が消える。


存在の記録が消える。


二人がいた痕跡すら消失していく。


観測者代行は動かない。


ただ決定しただけだった。


怪物は存在してはならない。


だから消える。


それだけの理屈。


だが。


轟音。


世界が軋んだ。


笑うものが止まる。


『……は?』


削除された空間の中を。


誰かが歩いている。


存在できないはずの場所を。


士郎が歩いていた。


否定された距離。


消された因果。


削除された法則。


全部を踏み潰しながら。


真っ直ぐ進む。


世界そのものが悲鳴を上げる。


士郎が少し笑った。


目が細い。


「効かねぇな」


踏み込む。


轟音。


拳。


重力を纏う。


振り抜かれる。


次の瞬間。


観測者代行を中心に。


周囲の法則ごと。


空間ごと。


世界ごと。


真正面から叩き潰した。


白い世界が割れる。


観測網が砕ける。


修復機構が悲鳴を上げる。


観測者代行。


初めて。


大きく揺れた。


頭の奥へ。


初めて。


焦りが流れ込む。


『異常』


『法則維持不能』


『再定義失敗』


『権限行使不能』


『理解不能』


今まで完璧だった声が乱れる。


その時だった。


翔が煙を吐く。


静かな目。


観測者代行を見ていない。


もっと奥。


もっと深い場所。


一本。


細い線。


だが中心防衛個体より遥かに強固な繋がり。


執行意思。


さらに上。


権限の根。


翔はそれを見つけていた。


静かな声。


「居る」


右手が僅かに動く。


次の瞬間。


観測者代行が止まった。


法則が止まる。


修復が止まる。


観測が止まる。


世界そのものが沈黙する。


そして。


観測者代行。


法則の圧。


存在そのものが。


静かに。


霧のように散った。


音もない。


抵抗もない。


断末魔もない。


ただ消える。


笑うものが固まる。


『……え?』


少し間。


顔が引き攣る。


『本物だよね?』


『今の本物だよね?』


『何で消えたの?』


誰も答えない。


セレナも沈黙していた。


観測者代行が消えるなど。


外界側の前提に存在しない。


士郎は前を見る。


もう消えた相手に興味はない。


少し笑う。


低く。


「弱ぇ」


その一言。


外界最高位代理個体への評価は。


それだけだった。


その瞬間。


外界全域が沈黙した。


観測が止まる。


法則が止まる。


声が止まる。


誰も何も言わない。


違う。


言えなかった。


初めて。


外界そのものが理解した。


自分達では。


止められないと。

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