第二部 第176話 排除
道の奥に現れた白い巨人は、人型だった。
だが、生物ではない。
存在しているだけで空間が歪み、法則そのものが圧力になって押し寄せてくる。
頭の奥へ直接、無機質な声が響いた。
『侵食源確認』
『危険度更新』
『排除開始』
笑うものの顔が引き攣る。
『あー……』
少し間。
『完全に敵認定された』
セレナの目が止まる。
静かな声だった。
「執行者です」
白い巨人を見る。
「外界上位存在。法則を執行し、異常を排除する存在です」
士郎は鼻を鳴らしただけだった。
「だから?」
次の瞬間。
白い巨人が手を上げる。
空間が揺れた。
違う。
削除された。
士郎達の前方にあった距離。
道。
進むという概念そのものが、唐突に消える。
笑うものが固まった。
『うわ』
短い。
『ルール消し!?』
士郎の目が細くなる。
初めて足が止まった。
だが。
止まったのは、それだけだった。
「鬱陶しいな」
重力が落ちる。
消された空間ごと押し潰そうとする暴力に、白い世界が軋む。
同時だった。
翔が煙を吐く。
視線は白い巨人ではない。
その奥。
法則を動かしている“意志”を見る。
執行。
排除。
命令。
一本の繋がり。
翔の右手が、僅かに動いた。
次の瞬間。
白い巨人が止まる。
頭に響いていた敵意が消えた。
圧が消える。
法則が止まる。
まるで突然、命だけを抜き取られたようだった。
セレナの目が揺れる。
「……執行意志を」
小さい声。
「殺した?」
翔は煙を吐く。
「知らねぇ」
それだけ。
士郎が少し笑った。
「隙だな」
踏み込む。
轟音。
重力が真正面から落ちた。
白い巨人。
法則。
構造。
全部をまとめて叩き潰す。
抵抗すらなかった。
外界上位存在。
執行者。
その全てが、一撃で砕け散る。
沈黙。
笑うものが固まる。
『……もう終わった』
少し間。
顔が引き攣る。
『上の奴だよね?』




