第二部 第174話 自由の外側
白い空間が。
静かに侵されていた。
士郎が歩く。
ただ。
それだけ。
なのに。
足元から。
白が黒く滲む。
距離が歪む。
法則が軋む。
遠くの景色が。
ゆっくりと崩れていく。
まるで。
世界そのものが。
士郎を拒絶しながら。
侵されているようだった。
笑うものが顔を引き攣らせる。
『……待って』
少し間。
白を見る。
『歩いてるだけだよね?』
短い。
『何で侵食進んでんの?』
士郎が目だけ向ける。
低く。
「知らねぇよ」
短い。
「俺の知ったことか」
翔が煙を吐く。
静かな声。
「進めばいい」
それだけ。
笑うものが固まる。
『いや自由すぎない!?』
少し間。
白を見る。
黒く侵されていく空間。
退いていく距離。
そして。
何も気にしていない二人。
小さい声。
『……自由』
少し間。
『君達さ』
短い。
『好き勝手すぎるんだよ』
士郎が鼻を鳴らす。
低く。
「だから?」
笑うものが言葉を探す。
少し間。
視線が揺れる。
『自分』
短い。
『自由って分かんなくてさ』
沈黙。
翔が煙を吐く。
静かな声。
「知らねぇな」
少し間。
「好きにやれ」
士郎が鼻を鳴らす。
低く。
「考えすぎだ」
それだけ。
笑うものが固まる。
数秒。
そして。
小さく笑った。
『……本当に参考にならない』
その瞬間。
——違和感。
遠く。
白い景色。
空間が。
僅かに。
“退いた”。
士郎が歩く。
また。
退く。
距離が伸びる。
道が曲がる。
空間そのものが。
二人を避け始めていた。
セレナの目が止まる。
小さい声。
「……あり得ません」
少し間。
白を見る。
静かな瞳が揺れる。
「外界が」
短い。
「恐怖しています」
世界が恐怖している。
なのに。
士郎と翔には。
何も関心がなかった。




