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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第38話 戦場の死神

血刃のゼクト戦死。


その報は、一瞬で北方戦線全域へ広がった。


魔族軍幹部。


前線最悪の怪物。


それを討ち取ったのは。


王国騎士でも。


英雄でもない。


黒狼――西園寺士郎。



ヴァルガ砦。


兵士たちは歓声を上げていた。


「勝ったぞ!!」


「ゼクトが死んだ!!」


「魔族軍が退いていく!!」


歓喜。


涙。


生き残った安堵。


だが。


その中心で。


士郎だけは静かだった。


戦場中央。


死体の山。


血の海。


その中で立っている。


黒いコートはボロボロ。


全身傷だらけ。


それでも。


まだ立っている。


兵士たちが士郎を見る。


恐怖。


畏怖。


熱狂。


だが

誰も近づけない。


英雄を見る目じゃなかった。


“災害”を見る目だった。



アレスが士郎へ歩み寄る。


「終わったな」


士郎は魔族軍の撤退を見ながら答える。


「まだいるだろ」


アレスは苦笑した。


本当に戦争しか見ていない。


アレスは静かに言う。


「お前のおかげで助かった」


士郎は興味なさそうだった。


感謝。


名誉。


そんなものに価値を感じていない。


グランが近づく。


「前線じゃもう伝説だぞ、黒狼」


「そうか」


「反応薄いな……」


士郎は血を払う。


ただ

少しだけ物足りなかった。


ゼクトは強かった。


だが。


まだ足りない。


もっと死に近い戦いが欲しい。


その飢えが消えない。



その夜。


ヴァルガ砦では宴が開かれていた。


生き残った兵士たち。


酒。


歓声。


勝利の宴。


だが

士郎は参加していなかった。


砦外壁。


一人で座っている。


静かな夜。


リゼが隣へ来る。


「またここにいた」


「ああ」


リゼは士郎を見る。


横顔。


どこか遠くを見ている目。


リゼは小さく言った。


「みんな士郎のこと、英雄だって言ってる」


士郎は少し黙る。


そして。


「違う」


即答だった。


リゼが見る。


士郎は夜空を見ながら言う。


「俺は人を救いたいわけじゃない」


風が吹く。


静かな声。


だが。


冷たい。


「強い奴と殺し合いたいだけだ」


リゼの胸が痛む。


分かっていた。


でも。


改めて言葉にされると苦しかった。


士郎は続ける。


「この戦場は悪くなかった」


その言葉に。


リゼは何も言えなかった。



同じ頃。


王都ヴァルディア。


王国上層部は、北方戦線の報告を受けていた。


ゼクト討伐


敵補給基地壊滅


ワイバーン部隊殲滅


幹部級複数交戦


戦線維持成功


その中心。


全てに同じ名前がある。


【黒狼】


幹部の一人が呟く。


「危険すぎる……」


別の男が言う。


「もはや国家戦力だ」


「いや」


老人が低く呟く。


「国家そのものを滅ぼしかねん」


沈黙。


誰も否定できなかった。



魔族軍側でも同じだった。


ゼクト死亡。


補給崩壊。


前線後退。


その原因。


黒狼。


魔族たちは、その名を恐れていた。


「人間じゃない……」


「戦場の死神だ……」


その異名は。


人類だけでなく。


魔族側にも広がり始めていた。



深夜。


士郎は一人で立っていた。


砦外。


静かな風。


遠くで死体を焼く炎が揺れている。


士郎は拳を握る。


戦場は終わった。


だが。


飢えは消えない。


もっと強い敵を。


もっと死に近い戦いを。


その時だった。


風に混じって。


微かな魔力を感じる。


遠く。


どこかから。


“視線”のようなものを感じた。


士郎の目が細くなる。


だが

すぐに消えた。


気のせいか。


その頃。


遥か遠方。


灰色の塔。


闇の中。


一人の女が、静かに笑っていた。


銀髪。


赤い瞳。


妖艶な魔力。


彼女は静かに呟く。


「ようやく見つけた」


灰の魔女。


エレノア。


世界最悪の魔術師は。


“黒狼”へ興味を持ち始めていた。


第二章

『血塗れの傭兵編』 完。

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