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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第36話 戦場最強

燃え盛る魔族軍補給基地。


炎。


黒煙。


崩れ落ちる砦。


その中心で。


西園寺士郎と血刃のゼクトが向かい合っていた。


周囲には無数の死体。


魔族兵たちは近づけない。


いや。


近づきたくなかった。


怪物同士の殺し合いに巻き込まれれば死ぬ。


本能で理解している。



ゼクトは燃える基地を見渡し、笑った。


「やってくれる」


士郎は血を払う。


「脆い砦だった」


ゼクトが楽しそうに目を細める。


「本当に最高だな、貴様」


次の瞬間。


ゼクトが消えた。


轟音。


魔剣が士郎の首を狙う。


士郎は拳で弾いた。


衝撃波。


炎が吹き飛ぶ。


二人が同時に踏み込む。


拳。


魔剣。


激突。


周囲の地面が砕け散る。



ヴァルガ砦。


兵士たちは遠くの爆音を聞いていた。


「まだ戦ってるのか……」


「黒狼とゼクト……」


誰も近づけない。


次元が違う。


アレスは城壁の上から炎を見つめていた。


その隣で、リゼは不安そうに呟く。


「士郎……」


嫌な予感がする。


今の士郎は危うい。


強い敵と戦うほど。


嬉しそうになる。


まるで。


死に近づくほど、生きている実感を得ているみたいに。



補給基地跡地。


ゼクトの魔剣が士郎の脇腹を裂く。


血飛沫。


だが

士郎は笑っていた。


「いい」


ゼクトも笑う。


「狂っているな」


士郎は拳を叩き込む。


轟音。


ゼクトが吹き飛ぶ。


だが空中で体勢を立て直し、魔剣を振るう。


黒刃。


巨大斬撃。


士郎は真正面から突っ込んだ。


拳。


黒刃粉砕。


ゼクトの眼前へ到達。


肘打ち。


顔面が歪む。


さらに膝蹴り。


肋骨粉砕。


ゼクトが血を吐きながら笑った。


「素晴らしい!!」


完全に本気だった。


魔力が膨れ上がる。


空気が震える。


士郎の全身からも、微かに黒い靄が漏れ始める。


本人は気づいていない。


だが

ゼクトは確信していた。


「やはりだ」


士郎が眉をひそめる。


「何がだ」


ゼクトは笑う。


「貴様は“こっち側”だ」


意味不明だった。


だが

その言葉を聞いた瞬間。


士郎の奥底で、何かがざわついた。



ゼクトが魔剣を掲げる。


「見せてやる」


黒い魔力が空を覆う。


巨大魔法陣。


今までとは比較にならない密度。


基地跡地全体が軋む。


ゼクトが吠える。


「これが俺の全力だ!!」


魔剣が振り下ろされた。


黒滅崩刃。


超広域殲滅斬撃。


山ごと消し飛ばす破壊。


士郎は笑った。


獰猛に。


「最高だ」


拳を握る。


筋肉が軋む。


骨が悲鳴を上げる。


だが

身体は軽かった。


死ねるかもしれない。


その感覚が。


たまらなく心地いい。


そして。


士郎が踏み込む。


轟音。


黒い斬撃へ真正面から突撃。


血が飛ぶ。


皮膚が裂ける。


それでも止まらない。


ゼクトの目が見開かれる。


「来るか!!」


士郎が黒滅崩刃を突破する。


そして。


ゼクトの眼前へ到達。


拳。


ドゴォォォォォォン!!!


世界が揺れた。


ゼクトの身体が吹き飛ぶ。


山肌へ激突。


大地が陥没する。


静寂。


炎だけが揺れていた。


士郎は荒い息を吐く。


全身ボロボロ。


だが

笑っている。


その時。


崩れた岩の中から、ゼクトが立ち上がった。


全身血まみれ。


鎧は砕けている。


それでも。


まだ笑っていた。


「……いい」


赤い瞳が士郎を見つめる。


「やはり貴様こそ――」


その瞬間。


ゼクトの背後から、魔族軍の角笛が鳴り響いた。


緊急撤退命令。


ゼクトが舌打ちする。


「チッ……」


士郎が前へ出る。


「逃げるのか」


ゼクトは笑った。


「次で決着をつける」


黒い魔力が噴き上がる。


転移魔法。


姿が消える。


静寂。


士郎は血を拭う。


そして。


少しだけ笑った。


「次か」


その目は。


完全に戦場へ魅入られていた。

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