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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第35話 黒狼夜襲

ヴァルガ砦の戦いは、一度膠着状態に入っていた。


魔族軍も被害が大きい。


特に。


黒狼。


たった一人の存在が、戦線そのものを狂わせていた。



夜。


ヴァルガ砦。


兵士たちは疲弊しきっていた。


だが誰も眠れない。


また夜襲が来るかもしれない。


ゼクトが動くかもしれない。


恐怖が消えない。


その中で

士郎だけは静かだった。


砦外壁に座り、夜の魔族陣地を見ている。


遠く。


無数の灯火。


魔族軍本陣。


リゼが近づく。


「また外見てる」


「ああ」


「……嫌な顔してる」


士郎は少し笑った。


「退屈だ」


リゼが呆れる。


「こんな状況で?」


士郎は魔族軍を見る。


数が多い。


だが

雑魚ばかり。


ゼクト級がもっといれば面白い。


そんなことを考えていた。


その時。


アレスとグランがやって来る。


アレスが低く言う。


「問題が起きた」


士郎は振り返る。


「なんだ」


「敵補給基地の位置が判明した」


グランが続ける。


「だが、奪還は無理だ」


魔族軍本陣の後方。


重防衛。


兵力多数。


普通に攻めれば壊滅する。


だが。


そこを潰せば

魔族軍の進軍は止まる。


アレスが険しい顔で言う。


「今の戦況では、正面戦争で押し返せない」


つまり。


奇襲しかない。


士郎は静かに聞く。


「殺せばいいんだな」


アレスとグランが黙る。


士郎はもう立ち上がっていた。


リゼが顔色を変える。


「ちょっと待って!!」


士郎は黒いコートを羽織る。


「一人で行く」


グランが苦笑した。


「やっぱそうなるか」


アレスは士郎を見る。


「本当にやれるのか」


士郎は少し笑う。


「簡単だ」


その言葉に

周囲の兵士たちの背筋が寒くなる。



深夜。


魔族軍補給基地。


巨大な砦型拠点。


大量の兵士。


見張り。


完全武装。


普通なら侵入不可能。


そのはずだった。


見張りの魔族兵が欠伸をした瞬間。


首が折れた。


ゴキッ。


音もなく。


黒い影。


士郎。


死体を静かに地面へ置く。


足音はない。


呼吸も静か。


まるで

本物の暗殺者。


前の世界。


世界最強の殺し屋。


その本領だった。



士郎は闇の中を進む。


見つからない。


見張りを殺す。


巡回兵を潰す。


気づかれる前に消す。


完全な暗殺。


魔族兵たちは理解できない。


仲間が消えていく。


音もなく。


恐怖だけが広がる。


その時。


基地中央。


指揮官クラスの魔族が異変に気づく。


「何かおかしい……」


直後。


顔面へ拳が突き刺さった。


轟音。


頭部粉砕。


周囲の魔族兵が絶叫する。


「敵襲!!」


だが遅い。


士郎はもう突っ込んでいた。



地獄だった。


拳。

蹴り。

肘。

人体破壊術。


魔族たちが次々死んでいく。


士郎は止まらない。


兵士百人。


二百人。


数では止められない。


むしろ。


増えるほど士郎は笑っていた。


「いい」


血飛沫の中。


黒いコートが翻る。


魔族兵たちの顔に浮かぶのは絶望。


「黒狼だ!!」


「黒狼が来たぞぉぉぉ!!」


パニック。


完全崩壊。


士郎は燃料庫へ到達する。


巨大な魔力燃料。


士郎はそれを見て笑った。


そして。


殴った。


轟音。


爆発。


基地全体が吹き飛ぶ。


炎が夜空を染める。


ヴァルガ砦からも見えていた。


兵士たちが呆然と呟く。


「なんだあれ……」


グランが乾いた笑いを漏らす。


「……成功しやがった」


アレスは黙って炎を見ていた。


理解してしまった。


西園寺士郎は。


軍隊より危険だ。



炎の中。


士郎は血まみれで立っていた。


周囲には魔族の死体。


基地は崩壊。


補給は壊滅。


その時。


遠くから濃い殺気。


ゼクト。


士郎は笑った。


「来たか」


炎の向こう。


血刃のゼクトが、静かにこちらを見ていた。


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