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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第34話 魔族軍幹部

ヴァルガ砦。


戦場は完全に崩壊していた。


炎。


悲鳴。


死体。


空には黒煙。


地上には血の川。


その中心で。


黒狼――西園寺士郎だけが前へ進んでいた。



魔族軍は恐怖していた。


数百で囲んでも止まらない。


大型魔獣を投入しても殴り殺される。


ワイバーン部隊すら全滅。


兵士の一人が震える声で叫ぶ。


「ひ、怯むな!!」


次の瞬間。


その魔族兵の上半身が消し飛んだ。


轟音。


士郎の拳。


周囲の魔族たちが後退る。


完全に士気が崩壊していた。


士郎は血を払う。


「弱い」


その言葉に。


魔族兵たちの顔が引きつる。



その時だった。


戦場奥。


巨大な魔力反応。


空気が変わる。


アレスの顔が険しくなる。


「来るぞ……!」


魔族軍が左右へ割れる。


そして

二つの影が現れた。


一人目。


黒い重鎧。


四メートル近い巨体。


巨大槌を背負った鬼人。


魔族軍幹部――剛鬼ガレス。


二人目。


白いローブ。


細身。


長い蒼髪。


周囲に無数の魔法陣を浮かべている。


魔族軍幹部――蒼氷のミレア。


兵士たちの顔から血の気が消える。


「幹部が……二人……!」


さらに。


その奥。


赤黒い鎧。


巨大な魔剣。


血刃のゼクト。


三幹部

同時出現。


絶望的戦力差。



ゼクトが笑う。


「黒狼」


士郎の目が細くなる。


「増えたな」


ガレスが巨大槌を肩へ担ぐ。


「貴様が黒狼か」


ミレアは冷たい目で士郎を見る。


「……妙な気配」


士郎は笑った。


「全員強いのか?」


ゼクトが答える。


「ああ」


その瞬間。


士郎の口元が歪む。


獰猛に。


「最高だ」


アレスが叫ぶ。


「士郎!! 一人で相手をするな!!」


普通なら当然だった。


魔族軍幹部三人。


国家崩壊級。


だが

士郎は前へ出る。


止まらない。


戦場全体が静まり返る。


兵士たちは理解できない。


なぜあの男は笑っている?



最初に動いたのはガレスだった。


巨大槌を振り下ろす。


轟音。


城壁が吹き飛ぶ。


だが。


士郎は真正面から拳を叩き込んだ。


激突。


衝撃波。


ガレスの目が見開かれる。


「なにィ!!」


士郎が踏み込む。


肘打ち。


巨体が揺れる。


さらに膝蹴り。


ガレスが吹き飛ぶ。


兵士たちが絶句した。


幹部級を

力で押している。


その瞬間。


ミレアの魔法陣が展開された。


無数の氷槍。


空を埋め尽くす。


「死になさい」


一斉発射。


だが

士郎は止まらない。


氷槍を殴り砕く。


蹴り砕く。


真正面から突破。


ミレアの目が細くなる。


「ありえない……」


次の瞬間。


士郎が眼前へ到達していた。


拳。


轟音。


ミレアの障壁が砕け散る。


そのまま吹き飛ばされた。



戦場が凍りつく。


魔族軍幹部二人を

一人で押している。


ゼクトだけが笑っていた。


「素晴らしい!!」


完全に興奮していた。


士郎の身体から、微かに黒い靄が漏れる。


本人は気づいていない。


だが

ミレアの顔色が変わる。


「ゼクト……!」


「分かっている」


ガレスも立ち上がりながら唸る。


「あれは……」


普通じゃない。


本能が警鐘を鳴らしている。


目の前の人間の中に。


“別の何か”がいる。



士郎は静かに拳を握る。


血。


死。


破壊。


戦場が熱い。


もっと壊したい。


もっと強い敵と殺し合いたい。


その衝動が膨れ上がる。


リゼは城壁から士郎を見ていた。


そして。


初めて本気で怖くなった。


今の士郎は。


本当に。


人間じゃなくなり始めている。

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