第二部 第104話 王の命令
夜の街道。
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補給隊の灯りが揺れていた。
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荷車三台。
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護衛十数人。
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痩せた顔。
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粗末な鎧。
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東砦へ運ばれる食料だった。
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ユースは地形を見る。
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林。
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街道。
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逃げ道。
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兵力差。
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正面からぶつかれば負ける。
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なら。
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勝てる形を作る。
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「左右から回れ」
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低い声。
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「逃げ道塞げ」
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兵達が動く。
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まだ慣れない。
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でも。
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もう躊躇わない。
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「殺すな」
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少し間。
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「武器捨てさせろ」
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兵の一人が戸惑う。
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「敵ですよ……?」
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ユースは補給隊を見る。
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疲れた顔。
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腹を空かせた目。
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バルドの私兵とは違った。
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「雇われただけかもしれない」
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静かな声。
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「敵増やしたくない」
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翔が煙を吐く。
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「甘い」
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少し間。
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「でも効率いい」
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士郎が鼻で笑う。
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「失敗したら死ぬけどな」
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ユースは頷いた。
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「分かってる」
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そして。
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聖剣を抜く。
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淡い光。
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街道へ出た。
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「止まれ」
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護衛達が凍る。
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左右の林から兵が現れる。
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後ろも塞がれていた。
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囲まれている。
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護衛隊長が剣を抜く。
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「敵襲——!」
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ユースが遮る。
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「武器を捨てろ」
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静かな声。
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「命は取らない」
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空気が止まった。
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護衛達が顔を見合わせる。
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一人が呟く。
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「……本当に助かるのか?」
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「飯も出す」
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沈黙。
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腹の音が鳴った。
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最初に。
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一本。
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剣が落ちる。
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続いて。
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槍。
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また一人。
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護衛隊長すら迷い始める。
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兵達がざわついた。
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戦わず終わる。
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そんな勝ち方。
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知らない。
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士郎が少し笑う。
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「へぇ」
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少し間。
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「らしくなってきたな」
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——次の瞬間。
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夜を裂く音。
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矢。
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一直線に。
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ユースの喉を狙っていた。




