第二部 第105話 王の一手
矢が夜を裂いた。
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一直線。
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ユースの喉。
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殺意。
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——だが。
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白い光。
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乾いた音。
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矢が弾かれる。
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聖剣だった。
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ユースが止まる。
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浅い呼吸。
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少し遅ければ死んでいた。
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林の奥。
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舌打ち。
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「チッ……」
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黒布の男達が現れる。
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弓。
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短剣。
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数人。
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補給護衛とは違う。
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護衛隊長が顔を青くした。
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「東砦の監視兵……!」
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男が鼻で笑う。
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「降伏とか笑わせんな」
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矢が番えられる。
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狙いは。
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補給隊。
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「裏切り者から殺す」
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空気が止まった。
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護衛達が震える。
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ユースが一歩前へ出る。
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怖い。
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でも。
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止まらない。
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聖剣を構える。
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「武器捨てろ」
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静かな声。
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監視兵達が止まる。
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「……は?」
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ユースは続けた。
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「補給は止まった」
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少し間。
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「東砦はもう終わりだ」
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男達が笑う。
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「馬鹿か」
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「砦には百人近く——」
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「腹減った砦だろ」
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遮る。
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静かな声だった。
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「補給切る」
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少し間。
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「周り囲む」
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「お前らも帰れない」
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空気が変わった。
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監視兵の顔が止まる。
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現実だった。
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数日。
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食料は尽きる。
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逃げ場もない。
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ユースが続ける。
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「降りるなら飯出す」
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少し間。
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「戦うなら」
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聖剣を少し握る。
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「今やる」
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静寂。
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監視兵達が顔を見合わせる。
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迷い。
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焦り。
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腹。
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現実。
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一本。
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弓が落ちた。
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続いて。
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もう一本。
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隊長格が舌打ちする。
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「……クソが」
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剣を捨てた。
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士郎が欠伸する。
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「終わったな」
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翔が煙を吐く。
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「早かった」
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ユースが止まる。
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「……これで終わり?」
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翔が短く答える。
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「終わらない」
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少し間。
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「砦」
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士郎が笑う。
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「次」
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翌朝。
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東砦。
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門の上。
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怒号。
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混乱。
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「補給隊は!?」
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「戻らねぇ!!」
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「もう食料が——!!」
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そこへ。
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門前。
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ユースが立つ。
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二十の兵。
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そして。
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後ろに。
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昨夜投降した補給兵達。
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静寂。
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ユースが聖剣を抜く。
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朝日に光る。
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「開けろ」
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静かな声。
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「降伏しろ」
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少し間。
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「飯ならある」
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風が吹いた。
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砦の兵達の顔が。
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揺れた。




