第二部 第103話 王の一手
夜だった。
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東砦へ続く街道。
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風が冷たい。
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ユースは馬上で地図を握っていた。
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兵は少ない。
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集められたのは二十ほど。
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元々の城兵。
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動ける民兵。
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そして。
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士郎と翔。
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二人だけ。
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少なすぎる。
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普通なら。
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終わっていた。
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兵が不安そうに言う。
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「ほ、本当に補給路を狙うんですか……?」
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「砦を攻めないで……?」
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ユースは少し黙った。
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怖い。
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間違っていたら。
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死人が出る。
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また。
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誰かが飢える。
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でも。
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立ち止まれない。
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「正面から行ったら負ける」
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静かな声。
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兵を見る。
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「死なせたくない」
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少し間。
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「だから勝てる形にする」
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風が吹いた。
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兵達が少し止まる。
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さっきまでの頼りなさが。
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少し違った。
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翔が煙を吐く。
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前方を見る。
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「来る」
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静かな声。
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街道の先。
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灯り。
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荷車。
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十数人。
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護衛。
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食料だった。
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ユースが止まる。
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思ったより少ない。
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でも。
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初めてだった。
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自分で決める。
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自分で襲う。
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士郎が横で欠伸する。
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「どうする」
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静かな声。
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「王様」
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試していた。
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ユースは荷車を見る。
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護衛。
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数。
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距離。
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逃げ道。
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深く息を吸う。
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そして。
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初めて。
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命令した。
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「囲め」
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兵達が止まる。
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ユースが続ける。
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「殺すな」
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少し間。
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「武器捨てさせろ」
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風が止まった。
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兵の一人が驚く。
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「な、何故です!?」
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「敵ですよ!?」
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ユースは少し考える。
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そして。
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静かな声。
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「腹減って雇われただけかもしれない」
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少し間。
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「敵増やしたくない」
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士郎が。
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少しだけ。
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目を細めた。
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翔が煙を吐く。
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「甘い」
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少し間。
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「でも効率いい」
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ユースが。
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少しだけ息を吐く。
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怖い。
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でも。
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もう逃げない。
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聖剣を握る。
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「行くぞ」
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初めて。
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王の命令だった。




