第二部 第102話 王の戦い方
「……どうやって取り返す?」
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ユースの声は低かった。
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東砦。
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食料。
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武器。
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補給。
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放置すれば。
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また民が飢える。
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だが。
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こちらに兵はいない。
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まともに戦えば負ける。
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兵が慌てて報告する。
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「敵は百二十ほど!」
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「元バルド派と東領兵が合流し、砦に籠城しています!」
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「物資も押さえられています!」
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ユースは少し黙った。
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怖い。
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でも。
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考える。
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もう逃げたくなかった。
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士郎が欠伸混じりに言う。
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「知らねぇよ」
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ユースが止まる。
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「え?」
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「お前の国だろ」
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士郎は地図を顎で示した。
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「俺に聞くな」
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静寂。
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兵も。
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商人も。
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黙る。
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ユースは地図を見る。
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百二十。
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正面突破は無理。
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兵力差。
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民の疲弊。
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時間もない。
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少しして。
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指が止まった。
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「……補給路」
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兵が顔を上げる。
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「東街道です!」
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「山側から食料が運ばれています!」
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ユースは頷いた。
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「正面からは行かない」
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広間が静まる。
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地主が顔をしかめる。
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「な、何を言ってる!?」
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「砦相手に兵も出さず勝てるわけ——」
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ユースが遮った。
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「兵が足りない」
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静かな声だった。
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だが。
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迷っていない。
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「なら戦い方を変える」
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地図を指で叩く。
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「補給を切る」
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空気が止まった。
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「囲む」
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「食わせない」
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「焦らせる」
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少し間。
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「夜に少人数で崩す」
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兵達が目を見開く。
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商人も。
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神官も。
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言葉を失う。
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真正面からぶつからない。
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消耗しない。
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勝てる形を作る。
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それは。
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弱い側の戦い方だった。
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翔が煙を吐く。
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「少し汚い」
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静かな声。
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ユースは小さく息を吐いた。
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「綺麗事で守れないだろ」
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民の顔が浮かぶ。
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飢え。
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恐怖。
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また失うのは嫌だった。
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士郎が少し笑う。
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「へぇ」
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試す目。
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「悪くねぇ」
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そして立ち上がる。
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「じゃあ行くか」
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ユースが顔を上げる。
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「……手伝ってくれるのか?」
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士郎は鼻で笑った。
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「見に行くだけだ」
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少し間。
◇
「お前がどう戦うか」




