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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二章 『血塗れの傭兵編』

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第31話 ヴァルガ砦

北方戦線最大防衛拠点――ヴァルガ砦。


巨大な石造要塞。


この砦が落ちれば、人類側防衛線は崩壊する。


つまり。


北方戦線そのものが終わる。



グランゼル要塞。


作戦会議室。


空気は重かった。


地図には、大量の赤印。


魔族軍。


総攻撃。


アレスが低く言う。


「ゼクトが動いた」


兵士たちの顔が険しくなる。


ゼクト。


今やその名だけで空気が凍る。


アレスは地図を指差す。


「敵の狙いはヴァルガ砦だ」


ヴァルガ砦。


北方戦線最後の壁。


そこが落ちれば、後方都市まで一直線。


幹部の一人が唸る。


「兵力差が厳しい……」


実際

人類側は押されていた。


連戦。

補給不足。

士気低下。

対して魔族軍は勢いがある。


その時。


士郎が口を開いた。


「砦を守ればいいんだな」


全員が振り向く。


アレスは静かに頷く。


「簡単に言うならな」


士郎は少し笑った。


「なら問題ない」


兵士たちの顔が引きつる。


この男。


本当に戦争を恐れていない。



移動開始。


王国軍。


傭兵団。


混成部隊。


ヴァルガ砦へ向かう。


道中

兵士たちは不安を隠せなかった。


「本当に防げるのか……」


「ゼクトが来るんだぞ……」


「もう終わりだ……」


そんな中

士郎だけは静かだった。


むしろ

少し機嫌がいい。


リゼが呆れた顔で言う。


「なんで楽しそうなの……」


「強い奴がいる」


「それ戦争の感想じゃないからね?」


士郎は答えない。


視線は前。


戦場だけを見ていた。



数時間後。


ヴァルガ砦。


巨大だった。


山岳地帯を利用した超大型防衛拠点。


高い城壁。


無数の砲台。


だが。


既に空気は絶望的だった。


兵士たちは疲弊しきっている。


傷兵だらけ。


食料も不足。


さらに。


砦の向こう側。


地平線を埋め尽くす魔族軍。


数万。


兵士たちの顔から血の気が引く。


「う、うそだろ……」


「数が多すぎる……」


その中央。


赤黒い鎧。


巨大な魔剣。


血刃のゼクト。


魔族軍が歓声を上げる。


人類側には絶望が広がる。


だが。


士郎だけは笑った。


「いるな」


ゼクトも士郎を見つける。


そして

獰猛に笑った。



その夜。


ヴァルガ砦内部。


兵士たちは武器を握りながら震えていた。


明日。


総攻撃が始まる。


多分、大勢死ぬ。


逃げたい。


だが逃げ場はない。


リゼも眠れなかった。


士郎は砦外壁に座っている。


一人で。


リゼが隣へ来る。


「寝ないの?」


「ああ」


「……怖くないの?」


沈黙。


士郎は少し考える。


そして。


「死ぬかもしれない戦いは嫌いじゃない」


リゼの顔が曇る。


士郎は続ける。


「生きてる感じがする」


その言葉に

リゼは何も言えなかった。


士郎は静かに夜空を見る。


遠く。


魔族軍陣地。


そこから濃い殺気が流れてくる。


ゼクト。


そして。


それ以外にも。


強い気配が増えていた。


士郎の口元が歪む。


「明日は面白くなりそうだ」


リゼは、その横顔を見て思う。


この人はもう

普通の場所では生きられないのかもしれない、と。

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