第二部 第84話 一歩
「ダセぇぞ」
◇
士郎の声だけが。
広場へ沈んだ。
◇
鎧の男が止まる。
◇
剣が震えていた。
◇
怖い。
◇
ただ。
◇
怖い。
◇
士郎が少し笑う。
◇
冷たい目。
◇
「言い返せなくなったら」
◇
少し間。
◇
「武器か?」
静かな声。
◇
「安いな」
◇
鎧の男が歯を食いしばる。
◇
怒り。
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屈辱。
◇
恐怖。
◇
全部が混ざっていた。
◇
「き、貴様……!!」
◇
士郎が鼻で笑う。
◇
「俺じゃねぇだろ」
静かな声。
◇
顎で示す。
◇
若い男。
◇
「喧嘩相手」
◇
風が少し吹く。
◇
若い男が止まる。
◇
怖い。
◇
でも。
◇
逃げない。
◇
士郎を見る。
◇
翔を見る。
◇
そして。
◇
前を見る。
◇
鎧の男が剣を握る。
◇
殺意。
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威圧。
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強い。
◇
足が少し震えた。
◇
翔が煙を吐く。
◇
静かな目。
◇
男を見る。
◇
「怖いか」
◇
少し間。
◇
「当たり前だ」
静かな声。
◇
「でも」
◇
煙が揺れる。
◇
「逃げたら終わり」
◇
男が少し息を呑む。
◇
笑う者が止まる。
◇
『お前今日ちょっと先輩感あるな!?』
◇
翔は無視。
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煙を吐く。
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若い男が深く息を吸う。
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震える拳。
◇
それでも。
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前を見る。
◇
そして。
◇
鎧の男へ。
◇
静かな声。
◇
「剣抜いて」
◇
少し間。
◇
少しだけ怒った目。
◇
「民守れるのか?」
◇
鎧の男が止まる。
◇
男が続ける。
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震えている。
◇
でも。
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止まらない。
◇
「怖がらせて」
◇
「奪って」
◇
「黙らせて」
◇
少し間。
◇
民を見る。
◇
「それで王気取りかよ」
◇
風が止まった。
◇
民達が少しずつ顔を上げる。
◇
誰かが。
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小さく頷いた。
◇
士郎が少し笑う。
◇
獰猛じゃない。
◇
試す目。
◇
「……一歩だな」




