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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』 第二章 『王の死んだ世界編』
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第二部 第83話 牙


風が。


少しだけ揺れた。



「王やる資格ねぇだろ」



男の声だけが。


広場へ残った。



誰も。


笑わない。



鎧の男。


商人。


神官。


地主。



顔が歪んでいた。



怒り。



焦り。



そして。



少しの恐怖。



商人が顔を赤くする。



「き、綺麗事だ!!」



震えた声。



「国は金で回る!!」



「飯だって金がなきゃ——」



男が止まる。



怖い。



でも。



逃げない。



少し間。



そして。



静かな声。



「じゃあ」



民を見る。



痩せた子供。



老人。



母親。



全部を見る。



「何で」



少し間。



「一番腹減ってる奴から奪うんだよ」



商人が止まった。



言葉が出ない。



神官が顔を歪める。



「秩序には犠牲が——」



男が遮る。



震えた声。



だが。



少し強い。



「ガキが泣くのが秩序か?」



風が止まった。



神官も黙る。



地主が怒鳴る。



「弱い奴は淘汰される!!」



「それが現実だ!!」



男が拳を握る。



怒り。



怖い。



震え。



全部が混ざる。



それでも。



今度は止まらなかった。



「違う」


静かな声。



少し間。



強く。



「弱い奴から奪う奴が」



拳が震える。



「一番弱ぇだろ」



広場が止まった。



民達が顔を上げる。



老人。



母親。



子供。



目が。



少しずつ変わる。



鎧の男が顔を歪めた。



「き、貴様ァ!!」



怒号。



剣を抜く。



男が止まる。



怖い。



身体が動かない。



だが。



次の瞬間。



士郎が少し前へ出た。



笑っている。



なのに。



冷たい。



怖い。



ただ。



怖い。



「おい」


静かな声。



少し間。



「喧嘩中に武器出すなよ」



冷たい笑み。



「ダセぇぞ」

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