第二部 第83話 牙
風が。
少しだけ揺れた。
◇
「王やる資格ねぇだろ」
◇
男の声だけが。
広場へ残った。
◇
誰も。
笑わない。
◇
鎧の男。
商人。
神官。
地主。
◇
顔が歪んでいた。
◇
怒り。
◇
焦り。
◇
そして。
◇
少しの恐怖。
◇
商人が顔を赤くする。
◇
「き、綺麗事だ!!」
◇
震えた声。
◇
「国は金で回る!!」
◇
「飯だって金がなきゃ——」
◇
男が止まる。
◇
怖い。
◇
でも。
◇
逃げない。
◇
少し間。
◇
そして。
◇
静かな声。
◇
「じゃあ」
◇
民を見る。
◇
痩せた子供。
◇
老人。
◇
母親。
◇
全部を見る。
◇
「何で」
◇
少し間。
◇
「一番腹減ってる奴から奪うんだよ」
◇
商人が止まった。
◇
言葉が出ない。
◇
神官が顔を歪める。
◇
「秩序には犠牲が——」
◇
男が遮る。
◇
震えた声。
◇
だが。
◇
少し強い。
◇
「ガキが泣くのが秩序か?」
◇
風が止まった。
◇
神官も黙る。
◇
地主が怒鳴る。
◇
「弱い奴は淘汰される!!」
◇
「それが現実だ!!」
◇
男が拳を握る。
◇
怒り。
◇
怖い。
◇
震え。
◇
全部が混ざる。
◇
それでも。
◇
今度は止まらなかった。
◇
「違う」
静かな声。
◇
少し間。
◇
強く。
◇
「弱い奴から奪う奴が」
◇
拳が震える。
◇
「一番弱ぇだろ」
◇
広場が止まった。
◇
民達が顔を上げる。
◇
老人。
◇
母親。
◇
子供。
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目が。
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少しずつ変わる。
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鎧の男が顔を歪めた。
◇
「き、貴様ァ!!」
◇
怒号。
◇
剣を抜く。
◇
男が止まる。
◇
怖い。
◇
身体が動かない。
◇
だが。
◇
次の瞬間。
◇
士郎が少し前へ出た。
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笑っている。
◇
なのに。
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冷たい。
◇
怖い。
◇
ただ。
◇
怖い。
◇
「おい」
静かな声。
◇
少し間。
◇
「喧嘩中に武器出すなよ」
◇
冷たい笑み。
◇
「ダセぇぞ」




